December 11 2004
まだ使ふ陸軍毛布肩身さむ
平畑静塔
季語は「毛布」で冬。句としてはどうということもないけれど、戦後生活のスケッチとして残しておきたい。「陸軍毛布」は、戦前戦中に陸軍で使ったもの。白っぽい海軍毛布とは違い、いわゆる国防色(カーキ色)だった。父が陸軍だったので、戦後の我が家では毛布のみならず飯盒や水筒にいたるまで、国防色だらけ。敗戦時に、それらを兵隊が持ち帰り、日常生活に使用していたわけだ。毛布と言っても、ふわふわしていない。極端に言えば、薄いカーペットみたいだった。だから着て寝ても、「肩身さむ」となるわけである。ふわふわの毛布が欲しくても、高価で買えない。我慢するしかない。その侘しさよ。句の発表時には、多くの人が思い当たり共感したことだろう。軍隊毛布のごわごわ・ごつごつは、むろん堅牢性耐久性を考えてのことだ。触ったことはないが、いまの自衛隊の毛布でも、相当なごわごわ・ごつごつではないだろうか。そういえば軍隊に限らず、プロ仕様の装備品や用具類は、現代の物でもたいていがごわごわ・ごつごつしている。たとえばプロ野球のユニフォームでも、草野球のそれなどとは大違いだ。数回すべりこんだら破れてしまうような、ヤワな出来ではないのである。現代の私たちはすっかりふわふわした物に慣れきってしまっているが、このことが心理的精神的にもたらしている影響は計り知れず大きいに違いない。『新歳時記・冬』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)
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