2015ソスN11ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 12112015

 ヒップホップならば毛糸は編みにくし

                           岡田由季

枯らしが吹いて、そろそろ厚いセーターやマフラーが恋しい季節になった。以前は電車の中や病院の待合室でも編み棒をせっせと動かしてセーターやマフラーを編んでいる人を見かけたが、軽くて安くて暖かい冬の衣料がいくらでも手に入る昨今、とんと見かけなくなった。ただひたすらに記号に沿いながら編み針をうごかしている時間は無心になれて楽しいものである。そこにクラッシックでも流れていれば編み針もスムーズに進むのだろうが、ヒップホップで調子がついてしまうとさぞ編みにくかろう。ヒップホップのリズムで身体を跳ね上げながら編み物をしている姿を想像しておかしくなってしまった。こういうユーモアを持った俳句、とてもいい。『犬の眉』(2014)所収。(三宅やよい)


November 11112015

 駅おりて夜霧なり酒場あり

                           久米正雄

んな辺鄙な土地であっても、駅をおりるとたいてい居酒屋があるものだ。呑兵衛にとってはありがたいことである。お店はきたなくても、少々酒がまずくても、ぴたりとこない肴であっても、お酌するきれいなネエちゃんがいなくても、霧の深い夜にはなおのこと、駅近くに寂しげにぶらさがっている灯りは何よりもうれしい。馴染みの店ならば、暖簾くぐると同時に「いらっしゃい!」という一声。知らぬ土地ならばなおいっそう、そのうれしさありがたさは一入である。夜霧よ、今夜もありがとう。中七の字たらず「夜霧なり」で切れて、下五へつながるあたりのうまさは、さすがに三汀・久米正雄である。五・五・五が奇妙なリズムを生んでいる。夜霧がいっそう深さを増し、あらためてそのなかに浮きあがってくる「酒場」が印象的である。暖簾をくぐったら、店内はどうなっているのだろうか? 勝手な想像にまかされているのもうれしい。正雄は俳誌「かまくら」を出して、鎌倉文士たちと俳句を楽しんだ。「かなぶんぶん仮名垣魯文徹夜かな」など、俳句をたくさん残している。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)


November 10112015

 木の化石木の葉の化石冬あたたか

                           茨木和生

竜や昆虫以外にも化石はある。木にも木の葉にも、時代を超えて化石となって残っているものがある。思わぬタイミングで残ってしまったものの悲しみを冬の始めのあたたかな日差しが包む。それはまるで、生まれたての赤ちゃんを包むおくるみのように、やわらかで清潔な太陽のぬくもり。長い時間をさかのぼり、化石が木であり、青葉だった時代にも、同じように太陽は頭上に輝いていた。その頃の木はなにを見てきたのだろうか。山は盛大に噴火を繰り返し、見慣れない鳥が枝に羽を休めていたのだろうか。それぞれの時間がそれぞれのなかでゆっくりと流れていく。『真鳥』(2015)所収。(土肥あき子)




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