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February 0722015

 紅梅のゆるく始まる和音かな

                           宮本佳世乃

の季節は春を待ちながら静かに始まり、その花は香りを放ちつつ早春を咲きついでいつのまにか終わってゆく。丸く小さい蕾はいかにもかわいらしく、その濡れ色を一輪ずつほどく濃紅梅もあれば、夕空の色にほころぶ薄紅梅もある。一言で濃い、薄い、と言っても数え切れないほどの色があり、纏う光や風によっても趣が変わる。そんな紅梅のさまざまな視覚的表情が、和音、という聴覚的表現で見えてくる。と、こんな風に理屈で、和音、という言葉に意味付けすることは作者の意図するところではないのかもしれない。ともあれ、独特の感覚で対象を捉えて自然に生まれた言葉にすっと頬をなでられたような、不思議な気がした。『鳥飛ぶ仕組み』(2012)所収。(今井肖子)


February 0622015

 鍋鶴の首の白さの田に暮るる

                           小圷健水

本で見かける鶴は、留鳥のタンチョウ、冬鳥のマナヅル、ナベヅルなどである。ナベヅルは胴体が鍋底のように黒い為こう呼ばれ、頭上の赤は遠くからは識別しにくい程度、そして首が白。鹿児島県出水平野や山口県熊毛地域の農耕地に飛来するが、他ではまれである。迫りくる夕闇の中で鍋鶴の白い首だけが暮れなずんでいる。冬の田んぼに響くコォーォーの一鳴きが淋しい。他に<かうかうと降りくる鶴と田の鶴と><尉鶲海をはるかに天主堂><冬帽や白き扉の懺悔室>などあり。「俳句」(2013年2月号)所載。(藤嶋 務)


February 0522015

 複写機のまばゆさ魚は氷にのぼり

                           鴇田智哉

ピー機でコピーをとることは職場ではありふれた日常業務の一つに過ぎない。そこには季節感も俳句に繋がりそうなものは一見なさそうに思えるが、蓋を閉めないでコピーをとると眩い光の棒が紙を押さえる手の下を横切ってゆく。その一瞬を捉えた掲句は、日差しを受けてキラキラ光る氷とその上で跳ねる魚の像を確かな手応えをもって引きだしてくれる。「魚氷にのぼる」の季語が由来する自然事象を目の当たりにする機会はほとんどないが、この句のリアルさは複写機の光と氷を輝かす早春の光の共通項にある。それを受けて歳時記のインデックスから引き出された季語も生動するわけで、ルーチンワークになっている日常を丁寧に見直し想像力を広げれば俳句の可能性もまだまだ広がりそうである。『凧と円柱』(2014)所収。(三宅やよい)




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