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June 0762014

 蛇のあとしづかに草の立ち直る

                           邊見京子

どもの頃は夏になると青大将が道を横切るのが当たり前だったが、長じてからは数えるほどしか出会っていない蛇。先日都内の庭園で後ろから、そっちへ今行くと蛇がいますよ、と声をかけられ、ありがとうございます、と走って行き久々遭遇したが、変な人と思われたに違いない。夏草の茂っている中で蛇に会った記憶はそうないが、いつも去っていく気配を見送るという感じだった。この句の作者も、そんな蛇の後姿をしばらく見ていたのだろう。たった今蛇が通った跡の草は蛇の進んだ方向へやや傾ぎながら倒れている。さらに見ていると、一瞬の強い力で踏まれたのとは違い、草はすぐしなやかに立ち直って風に揺れ始める。作者の視線もまた、確かでありしづかである。『俳句歳時記・夏(第四版)』(2007・角川書店)所載。(今井肖子)




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