関西学生野球で京大が23季ぶりに勝ち点をあげた。ご同慶の至り。(哲




句(前日までの二句を含む)

May 0852014

 黄金週間終わるブラシで鰐洗い

                           斉田 仁

休明けのがらんとした動物園での一コマ。生きていても剥製のように動かない鰐だけどゴールデンウイークに沢山の人の視線を背中に集めて疲れただろう。ゴシゴシとブラシでその背中を洗われて気持ちよさそう。ゴールデンウイークを黄金週間と表記したことで「黄金」という言葉の硬質感とごつごつの鰐の背中の硬さが響き合っていい感じだ。鰐の背中を洗うブラシの音まで聞こえてきそう。「俳句が出来ないときは動物園に行ったらいいよ」と俳句を始めたころ一緒に句会をやっていた年上の俳人からアドバイスをもらった。動物は楽しい想像力をかきたててくれるからだろうか。連休明けの一日、ベンチに座って動物たちをぼんやり眺めるのもいいかもしれない。『異熱』(2013)所収。(三宅やよい)


May 0752014

 チューリップ明るいバカがなぜ悪い

                           ねじめ正一

ューリップは春の季語だけれど、四月から五月にかけて色とりどりに咲き出す。バカにも「明るい」と「暗い」があるのか、正一さん?ーー確かにあるのだ。「明るいバカ」と言われて、私などがすぐ連想するのは「アホの坂田」であり、落語の与太郎さんである。落語の与太郎はなくてはならないキャラクターである。その明るいバカさ加減はどうにも憎めない。単なるバカというよりも人間の虚をついたり、常識を皮肉ったりと、バカにできない面があって一筋縄ではおさまらないおバカさんである。正一がここで詠む「バカ」に私は、チューリップのように明るい落語の与太郎さんを連想せずにはいられない。暗い陰湿なバカは願い下げである。(ホラ、そういうバカが世間に時々顔を出すではないか。)下五「なぜ悪い」に居直った様子がうかがえる。即ち、ワタシばかノ味方デス。掲句は田島征三の絵と組み合わさっている最新の絵本『猫の恋』(2014)のなかの一句。まちがいなく元気の出る絵本です。他に「ビリビリっと尻尾の先まで猫の恋」など、正一らしい楽しい句と絵十五組が収められている。まともな句は一つもない(?)という凄まじさ。帯の惹句に「絵と俳句のごっつんこ」とある。(八木忠栄)


May 0652014

 虎が一匹虎が二匹虎が三匹藤眠る

                           金原まさ子

の花の美しさは、古くから日本人をとりこにし「万葉集」では26首に見られる。満開の藤が盛大に懸け垂れるなかに立てば、その円錐形が天地をまどわし、甘い香りとともにめまいを覚えるような心地となる。その美しさは蔓で他者に支えられており、それはあらゆるものに巻き付き、食い込み、枯れ果てるまで締め上げるという残酷な側面を持つ。掲句では、唐突に登場した虎が最後になって眠れない夜に数える羊のかわりであることがわかる。藤の生態の獰猛さを思えば、おとなしく穏やかな羊ではまるでもの足りないというのだろう。肩をいからせ、舌なめずりをしながらたむろす虎を想像しながら藤はうっとりと眠りに落ちる。紫の藤の下に黄色と黒のビビッドな虎が一匹、二匹そして三匹。あなたなら眠れますか?『カルナヴァル』(2013)所収。(土肥あき子)




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