プロ野球オープン戦。負けつづけの阪神が昨日やっと勝ったよ。(哲




2014ソスN3ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 1232014

 ひとり酒胡麻すれ味噌すれ蕗の薹

                           多田道太郎

けいな気を遣わなければならない相手と酒を酌むよりは、ひとり酒の方がずっといい。気の合う相手であっても、やはりくたびれることがある。その時の気分でひとり静かに徳利を傾けたいこともある。主(あるじ)であるわれは、ひとり酒を楽しんでいるのだろう。いや「……すれ……すれ」と命じている様子から、気持ちが妙に昂じているのかもしれない。近くにはべる気易い相手に、蕗の薹をおいしく食すにあたり、「胡麻すれ味噌すれ」とわがままを言っているのだ。「勝手になさい!」ではなく、命令をきいてくれる「できた相手」がいれば、これにまさる美酒はあるまい。おいしそうな春到来。わがままを承知のうえで、酒呑みはそうした言動に出ることが多い(酒呑みの自己弁護に聞こえるかなあ)。「どうせ、酒も蕗の薹もひとり占めして、さぞおいしいことでしょうよ。フン」という呟きも、どこかから聞こえてきそうである。たいていの呑んべえは、じつはひそかに気を遣っている、かわいい男ではないのかしらん?(もちろん赦しがたい例外もあろう。)道太郎先生は大酒呑みではなかったが、楽しんでいた。小沢信男をして、その句を「飄逸と余情。初心たちまち老獪と化するお手並み」と言わしめた道太郎ならではの「お手並み」で、まこと飄逸な詠みっぷりですなあ。他に「老酔や舌出してみる春の宵」がある。『多田道太郎句集』(2002)所収。(八木忠栄)


March 1132014

 なほ続く風評被害畑を打つ

                           深見けん二

昨年秋にいわき市のホテルに宿泊した際の朝食のご飯は福島産と他県産が区別されていた。昨年末も同じだった。現在の風評被害の最たるものは、3年前のこの日に起きた東日本大震災を発端とした原発事故によるものだろう。風評とは根も葉もない噂のこと。噂は正しい情報を得ていない不安から引き起こされる。きれいな大地が戻ることを誰もが願い、春になれば種を蒔き、秋になれば収穫の喜びを分かち合う。土と生きる者として、あたりまえの幸せが叶えられない。種蒔きの準備のため土を耕す畑打ち。鍬を打つたび、黒々とした土が太陽の下にあらわれる。やがて大地はふっくらと種を待つ。(土肥あき子)


March 1032014

 三月十日も十一日も鳥帰る

                           金子兜太

句で「厄日」といえば九月一日関東大震災の日を指すことになっているが、この日を厄日と呼んだのは、私たちはもうこれ以上の大きな災厄に見舞われることはないだろうという昔の人の気持ちからだったろう。そうでないと、いずれ歳時記は厄日だらけになってしまうし……。ところが、関東大震災以降にも、人災天災は打ち止めになることはなく、容赦なく人間に襲いかかってきた。掲句の「三月十日」は東京大空襲の日であり、「三月十一日」は三年前の東日本大震災の起きた日だ。残念ながら、厄日は確実に増えつづけている。しかし人間にとってのこうした厄日とは無関係のように、渡り鳥たちは何事もなかったかのごとく、遠い北国に帰って行く。彼らにはたぶん必死の旅であるはずだが、災禍の記憶のなかにある人間たちは、飛んでゆく鳥たちを眺めてその自由さを羨しく思ったりするのである。だが人間と自然との関係は、人間側の勝手な思い込みだけでは、上手に説明できないだろう。これは永遠の課題と言えようが、作者はそのことを人間の側に立ちながらも冷静に見つめている。「海程」(2011年10月号)所載。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます