駆け込み需要なんか関係ない。早く春に駆け込んでほしい。(哲




2014ソスN3ソスソス8ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 0832014

 啓蟄や土まだ知らぬ嬰の足

                           吉田一郎

どりごの手足は、小さいのにちゃんと手足という当り前のことも含め、限りなく愛おしい。目の前に置かれたそんな手足を見つつふと自分の足に目をやれば、長きにわたり大地を踏みしめ自重を支え続けてきた我が足は逞しく、足の裏は固い。この子もやがて自分の足で立ち様々なことの待つ人生を歩いていくのだ、と思うとより愛おしさが増すのだろう。雛を納めると啓蟄。最低気温が五度を下回らなくなるとそちこち冬眠から覚めるらしいが、週間予報を見ても東京ですらまだまだ寒い。この先、冬と夏が長くなり春と秋は短くなっていく、などという説もありやれやれだが、それでも日々明るい何かを待ちながら過ごす三月である。『未来図歳時記』(2009・ふらんす堂)所載。(今井肖子)


March 0732014

 鳥の巣に鳥が入つてゆくところ

                           波多野爽波

の巣は、春の季語。鳥がちょうど、巣に入っていく瞬間を捉えた。通常ならば、「鳥の巣に鳥が入つてゆきにけり」としてしまいがち。しかし、それでは、単なる事実の報告になってしまって、面白味がなくなってしまう。下五「ゆくところ」の「ところ」という把握と描写に、的確な写生の醍醐味を感じる。『鋪道の花』(昭和31年)所収。(中岡毅雄)


March 0632014

 高階に飼はれし猫の春愁

                           長澤奏子

の路地を恋猫が素早く駆け抜けてゆく。マンションの高階に飼われている猫は身のうちにざわざわする恋の予感を感じつつもわけもわからずうろうろ部屋の中を歩き回るしか術がなかろう。人間だって空中に宙吊りになって暮らせば本能にかけ離れた暮らしになるわけで身体に悪そうだ。と同じマンション暮らしでも地べたに近い階に住んでいる私なぞはそんな負け惜しみを呟いてみる。低かろうが高かろうが、閉じ込められて外にでられない猫の憂鬱には変わりはないけど、高階だからこそその春愁がいっそう哀れで、艶めいて感じられる。『うつつ丸』(2013)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます