寒いなあ、イヤになるねえ…。お雛さまたちの独り言が聞こえる。(哲




2014ソスN3ソスソス3ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 0332014

 机除け書物除け即雛の間

                           中村与謝男

日の住宅事情では、昔の映画などに出てくるような特別な雛の間を作ることは難しい。それに雛本体はさして大きくなくても、かざるとなればかなりのスペースが必要だ。したがって、句のように机をずらしたり積んである本を片づけたりということになる。句集から推測すると、この雛飾りは一歳を迎えた娘さんのためのものらしい。親心が読者にも沁みてくる。我が家にも娘がいるのだけれど、どういうわけか雛に限らず人形全般が嫌いだったため、こうした苦労はせずにすんだ。しかし何も飾らないのも親として寂しいので、毎年小学館の学年雑誌の付録についてきた紙のお雛さまを、テレビの上にちょこんと乗せておいたのだった。人生いろいろ、雛飾りもいろいろである。『豊受』(2012)所収。(清水哲男)


March 0232014

 雛の間の無人の明るさの真昼

                           林田紀音夫

もいない雛の間の真昼。赤い雛壇に、白い顔の殿方と姫君が座っています。笛や太鼓や箏などの楽器と、黒い漆塗りの器が細やかに配置されていると、静寂の中に華やぎがあります。真昼の雛の間には、作者と人形たち以外は誰もいない。その明るさを詠まれる雛たちは幸せです。掲句は、昭和63年、作者64歳の作。しかし、昭和49年に上梓された第二句集『幻燈』を読むと、つねに亡き人の存在が見え隠れしていた苦悩を辿ることができます。「風の流れにつねにひらたく遺体あり」「海のまぶしさ白骨の人立ちあがり」「水平線藍濃く還れない戦死者」(これは、「愛国」を掛けているのか?)「抽斗(ひきだし)いっぱいの遺影軒には鳩ねむり」。みずからも昭和20年の春、最後の現役兵として入営した記憶を忘れることができません。例句もふくめて、この頃までの句作の多くが無季破格です。戦争の記憶には、有季定型には納まりきらない不条理があると推察します。しかし、それから歳月を経て掲句では、平明の境地を獲得しています。「雛の灯を消してひとりの夜に戻す」も。『林田紀音夫全句集』(2006)所収。(小笠原高志)


March 0132014

 片方が動けば動き春の猫

                           上野嘉太櫨

の恋、の傍題は他に、恋猫、うかれ猫、などあるが、その中で、春の猫、というと少し印象が違う感じがするのは、春、という言葉の持つ明るさのせいだろうか。この句も、恋の猫、とか、猫の恋、となっていれば、一匹の雌猫をめぐって戦う二匹の雄猫がリアルに浮かぶが、春の猫、とすることで、そこに生々しさよりも早春の喜びがより強く表される。『現代俳句全集 第二巻』(1954・創元社)にあったこの句の作者は、川端茅舎に師事したとあるが他に<癇癪のほとばしるまゝ麦踏に>など、おもしろい切り取り方をした句が残っている。(今井肖子)




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