何でもない日常を撮った桑原甲子雄写真集『私的昭和史』の醍醐味。(哲




2013ソスN12ソスソス26ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 26122013

 薔薇型のバターを崩すクリスマス

                           花谷和子

てもクリスマスらしい雰囲気を持った句である。私が子供の頃は今ほど街のイルミネーションも家に飾る大きなツリーもなく、普段と変わらない晩御飯の後こちこちに固められたバターケーキがクリスマスを感じさせる唯一のものだった。ケーキなどほとんど口にすることのない子供にとっては待ち遠しいものだった。ケーキにはデコレーションのピンクの薔薇と露に見立てた甘い仁丹(?)の露がついていた。掲句の薔薇はそんな時代めいたしろものではなく、ホテルなどで出される薔薇を象ったバターだろう。「崩す」という言葉がありながらクリスマスの特別な晩餐と、その華やいだ雰囲気を楽しく連想させるのは「薔薇」と「バター」の韻を踏んだ明るい響きと「クリスマス」に着地する心地よいリズムがあるからだろう。思えば日本のクリスマスも昔憧れた外国のクリスマスのように垢抜けたものになりつつある。さてそんなクリスマスも終わり今日からは街のにぎわいも正月準備一色になることだろう。『歌時計』(2013)所収。(三宅やよい)


December 25122013

 鮭舟の動き動かぬ師走かな

                           山岡荘八

鮭は今でこそ家庭の食卓に年中あがるけれど、小生が子どもの頃の地域では鮭は貴重だった。年に一度、大晦日の夜に厚切りにした串焼きの塩引きが食卓にならんだ。それを食べることで年齢を一つ加えた。飼猫も一切れ与えられて年齢を加えた。あのほくほくしたおいしさは、今も忘れられない。焼かれた赤い身の引きしまったおいしさ。今どきの塩鮭の甘辛・中辛の比ではなかった。鮭は北海道に限らず本州各地の川でも、稚魚の放流と水揚げが行われている。南限は島根県と言われる。定置網漁が多いが、掲句は漁師が川で舟に乗って網を操って鮭漁をしている、その光景を詠んでいる。大ベストセラー『徳川家康』全26巻を著した荘八は、越後・魚沼(小出)の農家の長男として生まれた。同地を流れる魚野川では、現在も網を操る鮭漁が行われている。シーズンに入って、厳しい寒気のなか鮭舟をたくみに操る漁師が、昔ながらの漁に精出している様子が見えてくる。魚野川の小出橋のたもとに、掲句は刻まれている。荘八には他に「菊ひたしわれは百姓の子なりけり」がある。「新潟日報」(2013年12月2日)所載。(八木忠栄)


December 24122013

 東京が瞬いてゐるクリスマス

                           茅根知子

リスマスイルミネーションの発祥は、森のなかで輝く星の美しさを木の枝にロウソクを点すことで再現しようとしたものだといわれる。日本では昭和6年「三越」の電飾がさきがけだという。現在では、人気スポットでは12月に入る前から光ファイバーやフルカラーLEDを駆使して、競い合うようにまたたいている。掲句は「東京が瞬く」と書かれたことで、東京自体があえかな光りをまとい息づいているように見えてくる。作者はクリスマスの喧噪からそっと離れ、スノーボールに閉じ込めたようなきらめく東京を、手のひらに収めるようにして飽かずに眺め続けるのだ。『眠るまで』(2004)所収。(土肥あき子)




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