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2013N924句(前日までの二句を含む)

September 2492013

 星の座の整つてくる虫しぐれ

                           前田攝子

月末、天文愛好家が「天体観測の宝庫」と賞賛するあぶくま高原に星を見に行った。昼の暑さはまだ夏のものだったが、山から闇がしみだしてくるような午後7時を回る頃には気温もすっかり下がり、長袖でなくては寒いほどだった。細やかな星のきらめきのなかで天の川に翼をかけたはくちょう座が天体から離れると、秋のくじら座が姿をあらわす。爽やかな空気のなかで、星たちは冴え冴えと輝きを増し、大きな部屋に描かれた天井絵を掛け替えるように、天体の図柄が変わる。秋の役者が揃ったところで、虫しぐれが地上でやんやの喝采をあげる。星座に虫の名を探してみるとひとつきり、それもハエ。なんとも残念なことだ。名前のない小さな星たちを集めて、秋の空にすずむし座やこおろぎ座を据えて、地上と天上の大合唱の間に身を置く空想を今夜は描いてみよう。〈舵取も荷積みも一人秋高し〉〈水に置きたき深秋の石ひとつ〉『晴好』(2013)所収。(土肥あき子)


September 2392013

 空港の夜長の足を組みなほす

                           坂本茉莉

港でのフライト待ち。その時間はまことに所在ない。予定時刻をだいぶ過ぎても飛ばなかったりすると、苛々感が募ってくる。そんな気持ちを表現した句だと単純に受け取ったが、あとがきを読んで、考えをあらためた。作者はタイ在住26年。「その間に仕事あるいは私用で、幾度日本とタイを往復したことでしょう。空港や飛行機は、私にとって単なる建物や乗り物以上の意味を持ち、ときに二つの文化を行き来する切り替えのための中継点であり、またあるときは日本にもタイにもなじめぬ心身を癒す休息場所でもあります」。つまり作者には、行楽などのために利用する空港というイメージはないわけで、「足を組みなほす」行為にも、たとえば考え事を組み立て直すきっかけ作りの意味があったりしそうである。これからも国際化時代は進行してゆく。伴って、空港のイメージも大きく変わってゆくのである。『滑走路』(2013)所収。(清水哲男)


September 2292013

 耳遠き身を聡くする虫の闇

                           河波青丘

成十七年、作者が88歳の年に句集『花篝』が出ました。一頁に二句、見開き四句の構成なので、眼鏡が必要な私にも読みやすく助かります。みなそうでしょうが、ふだん、字の細かい歳時記に苦心している読者にとって大きな活字はありがたい。掲句は80歳の作で、眼ばかりでなく、耳も遠くなってきたこのごろ、秋の夜は網戸にして窓はあけているので、鉦叩(かねたたき)のチンチンチンや松虫のチンチロリンの音が、身を聡(さと)くしてくれます。体の中を音が通過して浄化してくれている、そんな秋の夜長です。ところで、尺八の音階は「ロツレチリ」と謡い、西洋音階の「レファソラド」に対応します。チンチロリンとロツレチリ。日本の耳は、ロ、チ、リを好むのかもしれません。掲句は技巧も工夫されていて、「耳、身、闇」のmiで韻を踏み、また、「耳、聡、闇」の漢字は、「耳」と「音」からなる聴覚系で連ねています。チリリリリという虫の音に耳を傾け、聡明になっていく作者の身がたち現れています。(小笠原高志)




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