暑くなってくると昼寝をしたくなる。今年もそろそろだな。(哲




2013ソスN5ソスソス16ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 1652013

 たけのこに初めてあたる雨がある

                           中西ひろ美

けのこの伸びるのは早い。「竹の子がほめてほめてと伸びてゆく」という紀本直美の句があるけど、本当にとどまるところを知らない伸び方である。地面からちょいと頭が見えかけたものでも掘りさげるとかなり大きなサイズのたけのこになる。掘り起こしたら早めに料理しないと日が経てばたつほどエグミが出てくる。堀ったばかりのタケノコを刺身のように薄く切って食べるのが一番旨いというがまだ試したことはない。暗い地下からほっこり頭を出したタケノコに当たる雨は若葉雨だろうか。土の匂いとたけのこに降り注ぐ柔らかな雨を思うと読む側の心持もしっとりとしてくる。ぽこっと芽を出したたけのこをじっと見つめている作者のまなざしの優しさが伝わってくる句だ。「古い匂いも出てくるこどもの日」「京都までおいで一通の若葉」『haikainokuni@』(2013)所収。(三宅やよい)


May 1552013

 バスはるかゆらめいてみゆ薄暑かな

                           白石冬美

うした光景は一目瞭然であろう。いよいよ暑くなってきた時季、はるかかなたからよろよろと近づいてくる、待ちかねたバスが陽炎のようにゆらめいて見えてきた。♪田舎のバスはおんぼろ車/タイヤは泥だらけ窓は閉まらない……という、のどかな歌がかつてあったけれど、この場合、田舎のバスに限定することはない。にじむ汗を拭いながら、遠くからようやく姿を見せてやってきたバスに、ホッとしているのだろう。それにしても、見えているのにゆらめいているから、スピードはじっさい遅く感じられる。「はるかゆらめいてみゆ」の平仮名表記が、陽炎のように見えるバスのさまを表わしているところが憎い。汗だくの炎暑の真夏ではなくて、まだ「薄暑」の頃だから、掲句はきれいにおさまっている。この季語の使い方について、金子兜太は「とぼけて、はぐらかして、横からそっと差し出したような季語」と評している。他に「鬼灯を鳴らせば紅(べに)のころがりぬ」がある。俳号は茶子。猫の句を集めた句集『猫のしっぽ』がある。「俳句αあるふぁ」(1994年7月号)所載。(八木忠栄)


May 1452013

 薫風一枚ペーパーナイフに切られけり

                           中尾公彦

路樹の緑が日に日に濃くなり、木もれ日がきらきらと跳ね回る季節となった。梅雨の前のひとときは花の香りを含んだ風のなかで、清潔な明るさに包まれる。薫風とは、山本健吉によると「水の上、緑の上を渡って匂うような爽やかさ感ずる夏の南風」とある。生気溌剌たる風の触手が、触れたものの香りを掬いとって大気へと放つというわけだ。掲句では、ペーパーナイフを使う所作に、薫風も切り分けているのだとふと自覚する。愛用者は「切り屑が出ない」「書類まで切ってしまう失敗がない」などの長所を挙げるが、机上に常備しているのは少数派だと思われる。とはいえ、ペーパーナイフには特化を極めたものの美しさがある。ステンレス製、木製、象牙や水牛の角などさまざまな素材からなり、持ち手のカーブや装飾など、手になじむ心地よさを追求した結果の、もののかたちである。開封するという目的だけに作られたシルエットの美が、麗しい季節を最大限に引き立る。『永遠の駅』(2013)所収。(土肥あき子)




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