「みどりの日」が本日から来月四日に追われたのはいつだったか。(哲




2013年4月29日の句(前日までの二句を含む)

April 2942013

 かく甘き玉子焼なれ若楓

                           対中いずみ

葉若葉の季節になってきた。どの木々のみどりも美しいが、楓(かえで)のそれは抜きんでている。ハイキングでの昼食の時間だろうか。玉子焼きは弁当のおかずの定番といってよいだろうが、作者はこのときの甘い味に大いに満足して、玉子焼きはいつもこのような甘さであるべきだと悦に入っている。若い楓の葉が発する清らかな風のなか、さぞかしおいしかったろうなと、生つばが出てきそうな句だ。食べ物の句は、すべからくこのようにあるべきだ。またぞろ貧乏話で恐縮だが、子供の頃、我が家では鶏を飼っていたけれど、卵はめったに口に入らなかった。現金収入を得るための大事な商品だったからだ。何かの拍子に傷ついたり割れたりしてしまい、売り物にならなくなった卵一個を弟と分けあったことを思い出す。生卵をきちんと半分ずつに分けるだなんて、至難の業である。当然、喧嘩になった。食べ物を争う喧嘩ほど悲しいものはない。このような句が現れてくるなど、想像もつかなかった時代もあったということである。『巣箱』(2012)所収。(清水哲男)


April 2842013

 咲き誇りたる北大のチューリップ

                           秋沢 猛

年度から、はやひと月が経とうとしていますが、通勤電車はまだ混んでいます。四月は希望をふくらませる月です。プロ野球ファンしかり、大学生もまたしかり。四月の大学のキャンパスは、一年で一番にぎわいます。新入生はもちろん、出席不良でなかなか単位がとれなかった筆者のようなダメ学生も、ゴールデンウイークの前までは、せっせと開幕ダッシュをしておりました。北海道大学、道民の憧れである北大のキャンパスを歩く新入生は、咲き誇っている色とりどりのチユーリップのような明るい心持ちでしょう。北国の春はこれからです。掲句は、広いキャンパスに咲き誇るチューリップに、北大生の誇りと大志を重ねています。「咲き誇り」という大仰な表現も、学生の姿とチューリップの色彩を重ねることで、一句のなかでなじんでいます。また、北大がもつバンカラで大らかなイメージにもむすびつき、東大や京大や九大や早慶よりも、北大にはチューリップが似合います。「俳句歳時記・春」(角川ソフィア文庫・2012)所載。(小笠原高志)


April 2742013

 旨さうな「うどん」といふ字春の雨

                           岩崎ゆきひろ

どん、とひらがなで書くと、うどんに見えてくる。ことに、ん、の曲線がうどんぽくて、なるほどなあ、と。先月本屋で見かけた雑誌には、うどんの国ニッポン、の見出しと共に、手打うどん、の文字が黒々と躍っていた。うどん屋の看板をあれこれ見てみると、確かに太く勢いのあるものが多くその文字を見ると、ゆでたてのぶっかけうどんを勢いよく啜りたくなるのだ。掲出句、看板を明るく濡らす春の雨である。このところ冷えこんでいる東京の雨には春雨の艶やかな印象は乏しく、育ってきた緑をしっとりと包んでいて、こんな日なら暖かい汁たっぷりのうどんが食べたくなりそうだ。いずれにしても、春の雨、が一句に広がりを与えて詩にしている。『蟹の恋』(2012)所収。(今井肖子)




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