東京地方は雨模様。ちゃんと花見もしないうちに花散らしの雨か。(哲




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March 2432013

 山笑ふ着きて早々みやげ買ひ

                           荻原正三

るい春の旅の句です。着いて早々、ご当地土産を買い求め、すこしはしゃいでいる姿を、葉が出始めた山も迎え入れてくれています。句集では、「春風や頬にほんのり昼の酒」と続き、読むこちら側も、おだやかな春の旅の気分をわかち合えます。ところで、句集の跋文を書かれている岬雪夫氏によると、掲句が作られる十年前、荻原さんは難病に遭い、長期にわたる闘病生活を余儀なく過ごされていたそうです。そのとき、看病の枕元で奥さまが読んでいる俳誌を覗くようになり、入院、再入院の生活の中で句作を始められたとのこと。その頃の句に「行くところ他にはなくて蝸牛(かたつむり)」があります。そういう作者の背景を知ったうえで掲句を読むと、ほんとうに、山が笑っているのだと思えてきます。掲句は「平成十八年、四国高知にて」とあり、この旅で奥さまの八重子さんは、「酒酌めば龍馬のはなし初鰹」を残しています。掲句と並べると脇にもなり、連句のように楽しさが広がります。『花篝』(2009・ふらんす堂)所収。(小笠原高志)


March 2332013

 ピーちゃんを埋むる穴に椿敷く

                           箭内 忍

が家の庭の片隅にも、ハムスターのチップと金魚のキンキラが眠っていた。三年前に建て替える時は、神主さんにお願いしてその辺りを入念に祓っていただいたが、そっとのぞいても何も見あたらなく、ほっとしたようなさびしいような、そんな思いがした。チップを埋葬した時は、小学生だった姪が、好物だけどたくさんやってはだめと言われていたひまわりの種を敷いてやった、掲出句と比べるとずいぶん現実的だ。椿は庭の片隅にありその下は仄暗く、あたり一面に花が落ちていたのだろう。ふれるとやわらかいその花を冷たい土の上に敷き詰めて、そっとピーちゃんを寝かせてやる。白い文鳥なら花の紅が引き立ち、花が白ならばなお清らかだ。まだ寒さの残る今頃になると、この句と共にピーちゃんを思う作者なのだろう。『シエスタ』(2008)所収。(今井肖子)


March 2232013

 櫻のはなし採寸のあひだぢう

                           田中裕明

明な句で日常詠である。「もの」の写生ではなくて事柄のカット。採寸の場には、採寸する人とされる人と二人しかいない可能性が高いのだからその両者の会話だろう。作者がその会話を聞いていたのではないとするなら、作者はされる側の人である。吊るしを買わずオーダーの服であるから懐に多少の余裕のある状況もわかる。僕は昔ブティックで働いていたので採寸をする人であった。採寸をする側は客の話題におあいそをいう。機嫌をそこねないように話を合わせるのである。採寸をする側とされる側の櫻のはなしから両者の立場や生活が次第に浮き彫りになっていく。人間社会を描くとあらゆる角度からその人間に近づく工夫ができる。自然も面白いけど人間はもっと面白い。『セレクション俳人・田中裕明集』(2003)所収。(今井 聖)




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