マンションのエレベーターをクレーンで吊り上げ交換。見物だ。(哲




2013ソスN3ソスソス19ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 1932013

 瞑ることなきマンボウの春の夢

                           坊城俊樹

袋サンシャイン水族館で生まれて初めて泳いでいるマンボウを見たときは、長蛇の列の末のパンダより大きな衝撃を受けた。なにしろその巨大な魚は生きものとしてどう見ても不自然なのである。胸から後ろがぷつりと切れているような姿で、泳ぐというよりただそこに居る。水流にまかせてぼーっとしているだけなら、尾びれなど必要ないと進化の段階であっさり手放したのだろうか。水槽にはビニールの内壁が作られており、それは硝子面に衝突して死に至るケースがあるというマンボウへの配慮であった。こんなぼんやりした生きものがよくもまぁこれほど大きくなるまで生き延びたものだと怪訝に思っていると、なんと三億という途方もない数の卵を生むのだという。ともかく多く生むことで種を保つという方針を選択したのだ。眠るでもなく、起きるでもなく、ひたすら海中を浮遊し、時折海面にぶかりと浮かんで海鳥とたわむれる彼らの生きかたは、たとえるなら春が永遠に続くようなものだろう。マンボウの身はまことにとらえどころなく、淡くうららかな夢のような味だという。〈絵踏してよりくれなゐの帯を解く〉〈肩車しては桜子桜人〉『日月星辰』(2013)所収。(土肥あき子)


March 1832013

 強風や原発の底に竹の根

                           夏石番矢

どもの頃「地震のときは竹やぶに逃げろ」と教わった。関東大震災で怖い目に遭った母親からだったかもしれない。たしかに竹やぶのある土地は、竹の根が張り巡らされているので、少々の地震くらいではびくともしないように思える。しかしそれは表面に近い土地の部分について言えることであり、地下深くの竹の地下茎が腐って水を含み地盤沈下の原因になることが多いと言われている。つまり、竹やぶは決して地震に強いとは言えないわけだ。原発周辺の竹やぶをざわざわと揺さぶっている不気味な強風のなかで、作者はこの言い伝えを思い出したのだろう。そして原発の底に触れている無数の竹の根を想像している。一見頑丈そうなその環境が、実はそうではないと知っている作者は、とくに福島原発がダメージを受けた後だけに、不安な気持ちを押し隠すことができないでいる。この句を拡大解釈しておけば、すべての世の安全対策に対する疑念ないしは皮肉を提出しているということになるだろう。『ブラックカード』(2012)所収。(清水哲男)


March 1732013

 畝越えて初蝶ひかり放ちけり

                           佐藤博重

ンシロチョウ・モンキチョウ・スジグロシロチョウ・ウラギンシジミ・ムラサキシジミ・キタテハ・ベニシジミ。昆虫情報ブログでは、今年もすでに幾種類もの蝶が観測されています。越冬した個体と、この春に羽化した個体と両方あるそうです。寒さの中では、蝶は飛びません。とくに春先では、お日様が出ていて、風も強くない、うららかな日に限られます。掲句もたぶん。そんな春の日和でしょう。「畝(うね)越えて」が、この時季の蝶の様態をよく表しています。日差しを受けて温まった畝すれすれを選んで越えるのは、蝶の習性でしょう。畝の小高さが、ぬくもりのある空間を作っています。さて、蝶の種類は何か、これはわかりません。モンシロチョウが白い光を放っていることも想像できますし、ムラサキシジミが紫色の光彩を放っている姿も想像できます。いずれにしても、初蝶がひかりを放って畝を越える姿に、春の輝きをみてとれます。『初蝶』(梅里書房・2005)所収。(小笠原高志)




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