今井肖子さんの第一句集『花もまた』(角川書店)が出ました。(哲




2013ソスN3ソスソス18ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 1832013

 強風や原発の底に竹の根

                           夏石番矢

どもの頃「地震のときは竹やぶに逃げろ」と教わった。関東大震災で怖い目に遭った母親からだったかもしれない。たしかに竹やぶのある土地は、竹の根が張り巡らされているので、少々の地震くらいではびくともしないように思える。しかしそれは表面に近い土地の部分について言えることであり、地下深くの竹の地下茎が腐って水を含み地盤沈下の原因になることが多いと言われている。つまり、竹やぶは決して地震に強いとは言えないわけだ。原発周辺の竹やぶをざわざわと揺さぶっている不気味な強風のなかで、作者はこの言い伝えを思い出したのだろう。そして原発の底に触れている無数の竹の根を想像している。一見頑丈そうなその環境が、実はそうではないと知っている作者は、とくに福島原発がダメージを受けた後だけに、不安な気持ちを押し隠すことができないでいる。この句を拡大解釈しておけば、すべての世の安全対策に対する疑念ないしは皮肉を提出しているということになるだろう。『ブラックカード』(2012)所収。(清水哲男)


March 1732013

 畝越えて初蝶ひかり放ちけり

                           佐藤博重

ンシロチョウ・モンキチョウ・スジグロシロチョウ・ウラギンシジミ・ムラサキシジミ・キタテハ・ベニシジミ。昆虫情報ブログでは、今年もすでに幾種類もの蝶が観測されています。越冬した個体と、この春に羽化した個体と両方あるそうです。寒さの中では、蝶は飛びません。とくに春先では、お日様が出ていて、風も強くない、うららかな日に限られます。掲句もたぶん。そんな春の日和でしょう。「畝(うね)越えて」が、この時季の蝶の様態をよく表しています。日差しを受けて温まった畝すれすれを選んで越えるのは、蝶の習性でしょう。畝の小高さが、ぬくもりのある空間を作っています。さて、蝶の種類は何か、これはわかりません。モンシロチョウが白い光を放っていることも想像できますし、ムラサキシジミが紫色の光彩を放っている姿も想像できます。いずれにしても、初蝶がひかりを放って畝を越える姿に、春の輝きをみてとれます。『初蝶』(梅里書房・2005)所収。(小笠原高志)


March 1632013

 合作の壁画振り向き卒業す

                           花田いつ枝

年もこの季節がやって来た。自分自身の卒業の思い出はあまりに遠く、ほとんど記憶にないが、最初に卒業生を送り出した時のことはさまざまな場面と共に記憶に刻まれている。初めての袴が意外と楽だったことから、読み上げる時唯一つっかかってしまった生徒の名前まで、おそらく一生忘れないが、〈卒業の涙はすぐに乾きけり〉(今橋眞理子)の明るさが、卒業という別れの本質だろう。掲出句、見送っている教師として読んでも、一緒に校門を出ようとしている家族として読んでも、合作の壁画は、つと振り向いたその子をはじめとする一人一人を育てた、悲喜こもごもの月日を象徴している。最後に振り向いて、あとはただ前を向いて進んでほしい、と願うのみ。『海亀』(2012)所収。(今井肖子)




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