明日の朝は誰もが空を見上げる日。カメラは焼き付きにご用心。(哲




2012ソスN5ソスソス20ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 2052012

 其底に木葉年ふる清水かな

                           正岡子規

林洋子さんという若いアーティストが作った「時積層」という作品があります。高さ約3mの透明なアクリル製の直方体の中を、A3版の白いコピー用紙が一枚ずつ舞い降りてくる作品です。紙のかさなりによって時間の経過を視覚化させる砂時計のような装置です。掲句も、木の葉のかさなりが時の経過を物語ることで、清水の新鮮さを伝えています。「其底に」(そのそこに)と指示語で始まることで、かえって場所の具体性が指示されていて、句に、額縁をほどこす効果も感じられます。「其底」は、「その木の葉の底」です。木の葉が「降り」、年が「経(ふ)り」、幾重にもかさなった木の葉が古びてかさなり、今、「其底」から、清水が湧き出して、かさなり合った木の葉が下からもち上げられて流れ出てきています。掛詞として使われている「ふる」が、木の葉のかさなりを重層的に伝えています。深大寺の青渭(あおい)神社や水天宮など、水を祀る信仰は古来よりあります。掲句は信仰とは関係ないでしょうが、それでも清水の清浄な源泉を木の葉に隠れる「其底」と目に見えぬようにしているところに、清水に対する畏敬の念があるように思われます。「日本大歳時記・夏」(1982・講談社)所載。(小笠原高志)


May 1952012

 インターフォン押す前に見る赤い薔薇

                           纐纈さつき

週の土曜日、五月十二日に句会で出会った一句。初対面の印象は、赤い薔薇がくっきりしているなと。まず書きとめて、選を終え見直していると、ちょっと不思議な感じがしてくる。訪れたお宅の玄関先に咲いていた赤い薔薇が目に飛び込んで来たとして、それをわざわざ、見る、と言っているところ、それもインターフォンを押す前に。するとメンバーの一人がこの句を「ドアの外に薔薇が咲いていたのかもしれないけれど、もしかしたら赤い薔薇の花束を抱えてちょっとドキドキしながらドアの前に立っているのかもしれない。インターフォンを押す前に、その薔薇に目をやって心を落ちるかせる、そんな緊張感も感じられる」と鑑賞。なるほど、いずれにしてもこの薔薇は深紅でなければならない。作者は二十代の女性、実際はどうなの、の問いかけにちょっと恥ずかしそうに黙って笑っていた。(今井肖子)


May 1852012

 夕焼雀砂浴び砂に死の記憶

                           穴井 太

の句が載っている本には鑑賞者がいて、その人によるとどうもこの句は長崎の被爆の悲しみや憤りを詠った句らしい。仮にそれが自解などで間違いない創作動機であったにしてもこの句にはそんなことは書かれていない。夕焼けの中で雀が砂浴びをしているのを見ていると、作者には砂に「死」というものの記憶が感じられるという句である。それ以外のことは書いてない。僕に感じられるのは第一に夕焼雀という造語の抒情性。第二に雀の砂浴びという平和な風景の中に「死」を見ている作者の感性。「死」が理不尽なものであろうと自然死であろうと関係ない。たとえば輪廻転生を繰返してきた人の前世の記憶であってもいい。『現代の俳人101』(2004)所載。(今井 聖)




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