2011ソスN11ソスソス28ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 28112011

 初雪や父に計算尺と灯と

                           山西雅子

まどき計算尺を使う人はいないだろうから、回想の句だろう。夕暮れころから、ちらちらと白いものが舞いはじめた。初雪である。まだ幼かった作者は、雪を見て少しく興奮している。さっそく部屋で仕事をしている父に雪を告げようとしたのだけれど、彼はそのような外界の動きとは隔絶されているかのように、一心に計算尺を操っている。手元近くにまで灯火を引き寄せ、カーソルを左右に動かしながら細かい目盛りを追っている。ちょっと近寄り難い感じだ。この情景から見えてくるのは、技術畑で叩き上げられた謹厳実直な父親像であり、また真っ白い計算尺は灯影に少し色づいていて、そんな父親の胸の内を投影しているかのようにも見えている。初雪の戸外の寒さと、家の中の父親のあるかなしかの暖かみ。私の父も計算尺をよく使っていたので、この句の微妙な味は、よくわかるような気がする。「俳句」(2011年12月号)所載。(清水哲男)


November 27112011

 店の灯の明るさに買ふ風邪薬

                           日野草城

くなってきたなと思い始めるころには、間違いなく風邪をひく人が出てきます。「風邪をひかないように気をつけて」という挨拶が、自然と口に出てくるようになってきます。今日の句、風邪薬を買っているのは風邪をひき始めた当の本人なのでしょう。勤め人には、どうしても会社を休めない日があって(というか、たいていの日はそうなのですが)、風邪は仕事の大敵です。洟水を気にしながらなんて、とてもじゃないけど集中して仕事ができません。「灯の明るさ」は、風邪の症状のうっとうしさから確かに守ってくれる安心感を表しています。あたたかなオレンジ色に輝く店の灯に包まれて、まずは気分だけでも多少は持ち直したいものです。『日本大歳時記 冬』(1971・講談社) 所載。(松下育男)


November 26112011

 光る虫あつめて光り花八つ手

                           小島 健

所の緑道にある八つ手の木の前を昨日も通った。それは民家の裏庭の端に植えられていて、宇宙ステーションのような不思議な花の形が緑道にはみ出しており、本当にたくさんの虫が寄ってきている。この時期花が少ないからだと歳時記にあるが、それにしても虫がこんなに好くのだから、よほど蜜がおいしいのだろうかと調べると、小さいながら五弁の白い花の中心の蜜が光って虫を集めるのだという。そして、虻や蜂など黒光りするものが寒い中でも体温が下がらず元気なのでよく飛んでくる、とある。掲出句、花八つ手の白さと、そこに来ている虫が纏う日差し、という二つの光が淡い冬日をじんわりと感じさせ、ほのぬくい余韻が心地よい一句と思う。『小島健句集』(2011)所収。(今井肖子)




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