今宵はもうひとつの名月・十三夜ですね。栗名月、豆名月とも。(哲




2011ソスN10ソスソス9ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

October 09102011

 秋ふかき目覚め鉄階使ふ音

                           岡本 眸

階という言い方は通常聞きませんが、鉄の階段ということなのでしょう。句を読んでいるとたまに、作者が苦労をして言葉を縮めていることがあります。あまりやり過ぎると不自然になってしまいますが、この句は素直に受け入れられます。それほど工夫をして組み込んだ「鉄の階段」は、しっかりと存在を示しています。ああずいぶん寒くなったなと目覚めた朝に、まだかなり早い時刻なのに、外の階段をあわただしく下りて行く音が聞こえてきます。アパートの外階段なのでしょうか。下りて行く人の手のひらは、握った鉄のあまりの冷たさに、身ぶるいをしていることでしょう。この句がすごいのは、たったこれだけの長さの中に奥行きのある物語をしまいこんでいることです。朝、あわただしく外階段を下りて行く人の表情も、あるいはその音を聞きながらまだ布団に入っている人の表情も、それぞれに自分のこととして感じることができるのです。『日本大歳時記 秋』(1971・講談社) 所載。(松下育男)


October 08102011

 木犀や木の中はまだ雨が降る

                           八木荘一

が家の朝の窓に金木犀の香りがしたのは、今年は十月一日。植え替えた庭の木は残念ながら昨年同様花をつけないのだが、ご近所のそこここから香ってくる。一雨で、開花して香ることも香りごと散ってしまうこともあるが、ぐっと冷えこんだ雨の中、これを書いている今日もまだよく香っている。先日、どんよりとした空模様の中出かけた庭園に、それはりっぱな金木犀の一樹があった。少し湿った香りを放つその樹に近づいた時急に日差しが広がって、それまでとは違う明るい木犀の風に包まれた。日の中で輝く花とどこか濡れている幹と香り。雨を抱いたまま、やがて木犀も散ってしまう。『季寄せ 草木花』(1981・朝日新聞社)所載。(今井肖子)


October 07102011

 しどみ紅く滴りて服売りし金とどく

                           小川一灯

どみは草木瓜のこと。一灯(いっとう)は1916年生まれ。若い頃結核に罹り多年療養所で暮らし37歳で早世している。同じ頃に療養していた波郷と出会いその影響を受けた。波郷には「草木瓜や故郷のごとき療養所」がある。滴るのはしどみの紅色。なんともぎくしゃくするリズムの中に作者の切迫した真実が通う。『みんな俳句が好きだった』(2007)所載。(今井 聖)




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