いくら暑くても、どうもアイス・コーヒーを飲む気にはなれない。(哲




2011ソスN6ソスソス23ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 2362011

 微熱あり黒く輝くハイヒール

                           久保純夫

込むほどではない、さりとて何かしらだるく熱っぽい。頭がぼうっと霞がかかったよう。普段通りの生活をしているが瞼の裏が熱くて上ずった感じがするそんなうす雲のかかった脳裏に浮かぶハイヒールは幻想なのか、現実なのか。フェティシズムの中でも女の靴に欲望を示す男が多くいることは知られているが、この句にはあのとがった踵で熱っぽい頭を踏みつけてもらいたい。そんな怪しい欲望さえ感じられる。「微熱あり」と最初に置いてしまうとどんな妄想でも受け入れてしまう難しさがあるが、黒いハイヒールの残酷な輝きは、かえってなまなましい現実を意識させる。季語の共感に寄りかからないこの句の場合、読み手の側へ黒く艶のあるハイヒールがくっきりと浮き出てくれば成功というところか。『比翼連理』(2003)所収。(三宅やよい)


June 2262011

 川面吹き青田吹き風袖にみつ

                           平塚らいてう

性解放運動家らいてう(雷鳥)は、戦時中、茨城県取手に疎開していた。慣れない農作業に明け暮れながら、日記に俳句を書きつけていたという。小貝川が利根川に流れこむ農村地帯だったというから、いずれかの川の「川面」であろう。見渡すかぎりの田園地帯を風は吹きわたり、稲は青々と育っている。いかにも男顔負けの闘士の面目躍如、といった力強い句ではないか。疎開隠棲中の身とはいえ、袖に風を満たして毅然として立つ女史の姿が見えてくる。「風袖にみつ」にらいてうの意志というか姿勢がこめられている。虚子の句「春風や闘志いだきて丘に立つ」が連想される。らいてうが掲句と同じ土地で作った句に「筑波までつづく青田の広さかな」がある。さすがにこせこせしてはいない。らいてうが姉の影響で俳句を作りはじめたのは二十三歳の頃で、「日本及日本人」の俳壇(選者:内藤鳴雪)に投句し、何句か入選していたらしい。自ら創刊した「青鞜」にも俳句を発表していたようだ。戦後は「風花」(主宰:中村汀女)の句会に参加した。他に「相模大野おほふばかりの鰯雲」という壮大な句もある。『みんな俳句が好きだった』(2009)所載。(八木忠栄)


June 2162011

 夏至の日の水平線のかなたかな

                           陽美保子

日は夏至。北半球では一年で一番日の長い日である。日本ではたまたま梅雨のさなかに訪れるので実感は乏しいが、北欧では夏至(ミッドサマー)はクリスマスと同じくらい大切にされている。夏至祭のシンボル「メイポール」は白樺の葉とさまざまな花で覆われ、美しい民族衣装に身を包んだ男女がポールの周りを輪になって歌い踊る。最近知った「FIKA(フィーカ)」なる言葉は、スウェーデン語でティーブレイクを意味する。スウェーデンに本社を持つ企業では、夏至のためのFIKAが取られるという。遠く離れた異国の文化に胸を打たれるのは、太陽を寿ぐという生きものとしての源に深く共感するからだろう。沈まない太陽が地平線を流れるように移動する北欧の夏至の日を思えば、掲句の水平線がまだ見ぬ国を思わせる。そして、太陽は今日も地球のすみずみまであまねく光りを行き渡らせる。〈まつすぐに足の伸びたる裸かな〉〈かたつむり殻を覗けばをりにけり〉『遥かなる水』(2011)所収。(土肥あき子)




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