また暑くなるという予報。暑いよりも「熱い」と書きたくなる。(哲




2010ソスN9ソスソス11ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

September 1192010

 夕ひぐらし髪を梳かれてゐるやうな

                           神戸周子

年、蜩のかなかなかな、を耳にしたのは旅先で一度だけ。東京近郊に住む友人からのメールには盛夏の頃から「毎日蜩を聞きながら一日が終わります」と書かれていて、なつかしく羨ましく「遊びに行きます」と返信したがかなわなかった。早朝鳴いていることもある蜩だが、この句の蜩は夕暮れ時の遠ひぐらし。じっと聞いている作者を、夕ひぐらしが濡らしてゆく。降るような包むような蜩との透明な時間。梳く、というにふさわしいほど髪を伸ばしたことはないけれど、身をゆだねているその心地が静かに伝わってきて、目を閉じてひぐらしとの時間をそっと共有している。『展翅』(2010)所収。(今井肖子)


September 1092010

 けさ秋やおこりの落ちたやうな空

                           小林一茶

こりはマラリア熱の類。間欠的に高熱が襲う。けさ秋は「今朝の秋」、秋の確かな気配をいう。暦の上の立秋なぞものかわ今年のように暑いとまさにおこりを思わせる。横浜に住んでいて9月7日に到りひさしぶりに雨が降ったが秋の雨というような季語の本意には遠く、むしろ喜雨という言葉さえ浮んだのだった。観測史上の記録を塗りかえるほどの暑さを思うとおそらく一茶の時代よりも4、5度は現在の方が高温なのではないか。おこりよりももっと激しい痙攣のような残暑がまだまだ続くらしい。『八番日記』(1819)所収。(今井 聖)


September 0992010

 アンデスの塩ふつて焼く秋刀魚かな

                           小豆澤裕子

年の秋刀魚は不漁で例年より値が高い。10日ほど前駅前のスーパーで見た秋刀魚は一尾480円と信じられない値が付けられていた。この高騰にもかかわらず例年行われる目黒の秋刀魚祭りでは焼いた秋刀魚を無料で配ったというのだから、集まった人たちは「秋刀魚は目黒にかぎる」とその心意気に打たれたことだろう。それはさて置き、掲句にある「アンデスの塩」はボリビアから輸入されているうすいピンク色の岩塩だろう。ほんのりと甘く海塩とは違った味わいがある。銀色に光る秋刀魚にアンデス山脈から切り出されたピンク色の岩塩を振りかけて火にかける。思えば日々の食卓に上がるものはフィリッピンの海老だったり、ニュージーランドの南瓜であったり、アメリカの大豆であったり、世界各国から輸入されたものに彩られるわけで、ひとつひとつの出自を思いながら食せば胃の腑で出会うものたちがたどってきた道のりの遠さにくらくらしそうだ。『右目』(2010)所収。(三宅やよい)




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