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April 1642008

 葉脈に水音立てて春キャベツ

                           田村さと子

ャベツは世界各地で栽培されているが、日本で栽培されるようになったのは明治の初めとされる。キャベツは歳時記では夏に類別されているが、葉は春に球形になり、この時季の新キャベツは水気をたっぷり含んでいて、いちばんおいしい。ナマでよし、炒めてよし、煮てよし。掲出句は、まだ収穫前の畑にあって土中から勢いよく吸いあげた水を葉の隅々まで行き渡らせ、しっかりと球形に成長させつつあるのだろう。春キャベツの勢いのよさや新鮮さにあふれている句である。葉脈のなかを広がってゆく水の音が、はっきりと聴こえてくるようでさえある。恵みの雨と太陽によって、野菜は刻々と肥えてゆく。このキャベツを、すでに俎板の上に置かれてあるものとして、水音を聴いているという解釈も許されるかもしれない。俎板の上で、なお生きているものとして見つめている驚きがある。「水音」と「春」とのとりあわせによって、キャベツがより新鮮に感じられ、思わずガブリッとかぶりつきたい衝動にさえ駆られる。先日見たあるテレビ番組――しんなりしてしまったレタスの株の部分を、湯に1〜2分浸けておくと、パリパリとした新鮮さをとり戻すという信じられないような実験を見て、野菜のメカニズムに改めて驚いた。もっともこれはキャベツには通用しないらしい。さと子はラテンアメリカをはじめ、世界中を動きまわって活躍している詩人で、掲出句はイタリア語訳付きの個人句集に収められている。ほかに「井戸水の生あたたかき聖母祭」「通夜更けて雨の重たし桜房」など繊細な句がならぶ。『月光を刈る』(2007)所収。(八木忠栄)




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