昨夜は久しぶりの友人たちと高田馬場「養老の滝」。ここがこの店の発祥地とはね。(哲




2008ソスN3ソスソス22ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 2232008

 ジプシーの馬車に珈琲の花吹雪

                           目黒はるえ

ラジル季寄せには、春(八月、九月、十月)の項に、花珈琲(はなカフェー)とあるので、この句の場合も、珈琲(カフェー)の花吹雪、と読むのだろう。なるほどその方が上五とのバランスも調べもよい。前出の季寄せには「春の気候となり雨が大地を潤すと、珈琲樹は一斉に花を開く」とある。残念ながら、珈琲の花は写真でしか見たことがないが、白くてかわいらしい花で、その花期は長いが、一花一花はほんの二、三日で散ってしまうという。広大な珈琲園が春の潤いに覆われる頃、珈琲の花は次々に咲き、次々に散ってゆく。ジャスミンに似た芳香を放ちながら、ひたすら舞いおちる花の中を、ジプシーの馬車が遠ざかる。やがて馬車は見えなくなって、花珈琲の香りと共に残された自分が佇んでいる。花吹雪から桜を思い浮かべ、桜、日本、望郷の念、と連想する見方もあるかもしれない。けれど、真っ白な花散る中、所在を点々とするジプシーを見送るのは、ブラジルの大地にしっかりと立つ作者の強い意志を持った眼差しである。あとがきに(句集をまとめるきっかけは)「三十五年振りの訪日」とある。〈春愁の掌に原石の黒ダイヤ〉〈鶏飼ひの蠅豚飼ひの蠅生る〉など、ブラジルで初めて俳句に出会って二十七年、遠い彼の地の四季を詠んだ句集『珈琲の花』(1963)。(今井肖子)


March 2132008

 先生やいま春塵に巻かれつつ

                           岸本尚毅

読、文体が古雅。雅というよりも俗の方だから古俗ともいうべきか。近代俳句調と言ってもいい。その理由の最大のものは「先生や」の置き方にある。主格の「は」「が」に替わる「や」は子規、虚子の時代においては多く使用された。「や」「かな」「けり」には詠嘆などの格別の意味があるのかいなと思われるほどに、なんとはなく(安直に)あきれるほど多く使われた。そのために現代俳句では、(秋桜子以降を現代と呼ぶなら)切れ字が俳句の抹香臭さの元凶のひとつとされ、例えば山口誓子の句集『激浪』では所収の一二五四句の中に切れ字「や」はほとんど使われていない。戦後は、古典に眼を遣ると提唱した石田波郷などの影響で、切れ字使用に関しては俳句形式の特性として肯定的に捉える考え方が生まれ、その分、切れ字に関しては慎重な使い方が主流になった。「や」は、その前と後ろで切れなければいけないとの思い込みである。多義的な(言い換えればいいかげんな)「や」が姿を消し、それにともなって主格の「や」も今日ではほとんど見られない。作者はすでに古典になったこのいいかげんな「や」を用いることで俳句の古い文体を今日に生かそうとしている。内容は読んでの通り。この「先生」は作者の師波多野爽波であってもいいし、なくてもいい。「先生」は故人であってもいいし、現存する眼前の人でもいい。故人であれば春塵の中を昇天していくイメージ。(その場合は爽波は秋に逝かれたので対象にはならない)眼前のひとならば春塵の中を颯爽と去ってゆく師への思いである。念のために言うが、この句、一句一章の「や」である以外の可能性はまったくない。『平成秀句選集』(2007)所収。(今井 聖)


March 2032008

 白木蓮そこから先が夜の服

                           小野裕三

だかまだかと楽しみにしていた白木蓮が先週末の暖かさでいっせいに花を開き始めた。「暑さ寒さも彼岸まで」というけど、このまま後戻りすることなく春は加速していくのだろうか。この花の清楚に立ち揃う蕾の姿もいいけれど、ふわりとハンカチを投げかけた開き始めの姿もいい。そう言っても雨風になぶられると、あっさり大きな花弁を散らしてしまうので油断ならない。この頃は散歩の途中で白木蓮の咲きぐあいを見上げるのが日課になっている。きっぱりと夜目に浮き立つこの花は昼とは違う表情をしている。掲句は暮れ時の白木蓮の様子を女性の装いの変化に重ねているようだ。昼のオフィスでの活発ないでたちから夜のパーティ用にシックなドレスに着替えて現れた女性。「そこから先」は暗くなる時間帯を指すとともに装いが変わることを暗示させているともとれる。「はくれん」の響きには襟の詰まったチャイナ服など似合いそうだ。そう思えば細長い花弁を開いたこの花がある時間帯が来ると妙齢の女性に変身する楽しさもあっていよいよ夜の白木蓮から目が離せない。「君たちのやわらかなシャツ四月馬鹿」「菜の花の安心できぬ広さかな」句集全体は現代的な感覚で疾走感があり、取り合わせの言葉の斬新さが印象的である。『メキシコ料理店』(2006)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます