暑さで会社のクーラーがダウン。室外機にジャージャー水道水をかけるハメに。(哲




2007ソスN8ソスソス17ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

August 1782007

 膝抱けば錨のかたち枇杷熟れる

                           坪内稔典

、海軍、滅亡、沈没、死者、敗戦、夏・・・というふうに日本人の連想は続く。夏と敗戦のつながりは決定的で、夾竹桃や百日紅からもすぐ敗戦を連想する人さえいる。そういう日本人がいなくなる未来はどのくらい経ったらやってくるのだろう。テレビの街頭インタビューで日本がアメリカと戦ったということすら知らない若者が何人もいたが、これはにわかには信じがたい。日本人の大学進学率は確か七十パーセントを超える。第二次大戦は言わずもがな、ポツダム宣言あたりを知らなければ大学はおろか、有名私立中学にも受からない。あのテレビはやらせだ。この句は日本人の苦い連想の上に立っている。「膝抱けば」は死者の姿勢。沈んでいる遺骨への思い。同じ句集の中の「赤錆のわたしは錨草茂る」も同様の内容。この句では、陸の上にある見えている錨が描かれる。わたし即ち錨という発想だが、草茂るもあるし、わたし、日本人、戦争、夏、というイメージからは離れられない。作者もその効果を承知で構成している。錨即ち海軍。どうも帝国海軍は知的であったのに帝国陸軍が横暴で敗戦必定の戦争に持ち込んだという論議が一般的だ。ほんとにそうかなあ。海軍もめちゃくちゃな作戦で多くの海戦をやったように思える。今から見れば。『月光の音』(2001)所収。(今井 聖)


August 1682007

 忘れいし晩夏は納屋のかたちせり

                           津沢マサ子

れていた晩夏は納屋のかたちをしている。単純に意味を追えばそうなる。納屋といっても狭い住居に暮らす都会では想像しにくい場所になってしまった。農機具や役に立たなくなった生活用品を保管する納屋は、日常から隔たった薄暗い場所。おとなは用のあるときにしか立ち入らないが、子供にとっては絶好の隠れ家だった。親に見つからないよう身を潜めて流行おくれの帽子をかぶってみたり、いけない本を盗み見たり、ほこりだらけの鞄の底を探ったりした。閉め切った納屋の空気はむんむんして、扉の隙間から細く射す金色の光に細かな埃が浮いているのを不思議な気持ちで眺めた。永遠に続くように思われた夏休みももうすぐ終わってしまう。納屋で過ごしたひとりの時間がこの句を読んで蘇ってきた。あの夏の一日もガラクタのように納屋へ放り込まれてしまったのだろうか。納屋は過ぎ去った日々を過ごした懐かしい場所であるが、その記憶もいつしか曖昧になって納屋そのものになってしまうのかもしれない。その中に入ろうとしてももはや子供の私へ立ち戻ることは出来ない。「納戸より見ゆるむかしの夏の色」と岡本高明の句もある。遠い夏の日々は納屋や納戸にこそ息づいているのだろう。『風のトルソー』(1995)所載。(三宅やよい)


August 1582007

 敗戦の日の夏の皿いまも清し

                           三橋敏雄

日八月十五日は「敗戦の日」。あれは「終戦(戦いの終わり)」などではなかった。昭和二十年のこの日がどういう日であるか、知らない若者が今や少なくない。若者どころか、十年近く前に、この日を知らない七十歳に近い女性に会って仰天したことがある。「八月六日」や「八月九日」を知らないニッポン人は、さらに全国で増えている。敗戦の日の暑さや空の青さについては、あちこちで語られたり書かれたりしてきたが、ここで敏雄の前には一枚の皿が置かれている。おそらくからっぽの白っぽい皿にちがいない。それは自分の心のからっぽでもあったと思われる。皿はせつないほどに空白のまま、しかも割れることなく消えることなく、いつまでも自分のなかに存在しつづけている。皿は時を刻まず、新たにごちそうを盛ることもない。悲しいまでに濁りなく清々しい。「清し」には「潔(いさぎよ)い」という意味もある。万事に潔くないことが堂々とまかり通っている昨今を思う。「清し」という言葉には、八月十五日の敏雄の万感がこめられていただろう。敏雄は句集『まぼろしの鱶』(1966)の後記にこう書いている、「敗戦を境に、世の新たな混乱はまた煩憂を深くさせた」と。「いまも清し」という結句をその言葉に重ねてみたい思いに駆られる。この国/私たちは現在、この「皿」に見掛け倒しの濁った怪しげなものをあからさまに盛りつけようとしてはいないか? 冗談ではなくて、私には「皿」の文字が「血」にも見えたりする。掲出句とならんで、よく知られている句「手をあげて此世の友は来りけり」も収められている。『巡禮』(1979)所収。(八木忠栄)




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