原発の放射能心配と新潟のホテルでキャンセル続出。気の毒だが、当たり前だ。(哲




2007ソスN7ソスソス20ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

July 2072007

 工女帰る浴衣に赤い帯しめて

                           富安風生

前の結婚年齢を考えれば「工女」はまずハイティーンまで。十四、五歳くらいが多かったのかもしれぬ。これは、働く少女たちの可憐さを詠んだ句だ。連れ立った工女たちはどこへ帰るのか。工場のある町の夏祭などの風景なら、工場の寮に帰るのだろう。作者はそれをどういう心境で見ているのか。働く若い健康な肉体の美しさを讃えつつ、それに対する慈愛の眼差しがここにはある。作者は高級官僚だったから、ひょっとしたら、こういう少女たちのためにもいい社会をつくらなければならないと思ったかもしれない。現実の政治機構を肯定し、その機構の内部から大衆を啓蒙し導く立場に立った上での「工女帰る」の感慨である。同じ風景を小林多喜二や石川啄木が見たらどう詠むだろうか。啓蒙する側とされる側、管理する側とされる側の区分を、人は致し方なく受け入れるのか、無自覚に受け入れるのか、受け入れがたいとして抗うのか。「工女」という言葉をみるだけで、「女工哀史」を思ってしまう僕は、どうも明るい健康なロマンから離れた複雑な思いをこの風景に感じてしまう。講談社版『日本大歳時記』(1982)所載。(今井 聖)


July 1972007

 淋しい指から爪がのびてきた

                           住宅顕信

頭火や尾崎放哉の自由律俳句は、彼らの特異な生き方を加味して読まれるケースが多いようだ。季語の喚起力や定型を捨てた代わりに作者の人生を言葉の裏づけにしているとも言える。掲句の住宅顕信(すみたくけんしん)もまた、若くして不治の病に侵され26歳の若さで他界した。「ずぶぬれて犬ころ」「降りはじめた雨が夜の心音」などの句がある。この欄に載せようと、掲句を選んだあと、「淋しいからだから爪がのび出す」という放哉の句と似ているのに気づき、その類似について考えていた。放哉に私淑していた顕信がそれを知らないはずはない。が、顕信には顕信の現実があった。その現実を境涯と言い換えてもいいと思うが、そこから考えると類想で片付けられないものも見えてくる。掲句の「指から爪がのびてきた」には手を頭の上にかざしてじっと見入っている病臥の長い時間が感じられる。放哉もまた病魔に冒されていたが、「からだから爪がのび出す」という突き放した表現に荒々しさも感じられる。処し様のないこの激しさが放哉を小豆島の孤独な生活へ追い込んでいったのかもしれない。境涯から読むことは、似ている両句の違いを理解する一助にはなるだろう。しかし彼らの境涯を知らずにそれぞれの句を読んで心を動かされる読者もいるだろう。それは両句とも爪がのびる何気ない生理現象に焦点をあてることで、人間が共通して持っている「淋しさ」への道をひらいているからこそ人を魅了するのかもしれない。『住宅顕信 全俳句集全実像』(2003)所収。(三宅やよい)


July 1872007

 物言はぬ夫婦なりけり田草取

                           二葉亭四迷

植がすんでからしばらくすると、田の面に草がはえはじめる。一番草、二番草・・・・と草の成育にしたがって、百姓は何回も田草取りに精出さなければならない。「田の草取り」とも言う。田に這いつくばるようにして、両手を田の面に這わせ、稲の間にはえた草をむしり取って、土中に埋めてゆく。少年時代に、ちょっとだけ手伝わされたことがあるが、子どもにはとてもしんどかった! 二番草、三番草となるにしたがって稲の背丈が伸びてくるから、細かい網でできた丸い面を顔にかぶる。稲の葉先は硬く鋭く尖っているから、顔面や眼を守るための面である。蒸し暑い時季だから汗は流れる、這いつくばっての作業ゆえ、腰が棒のようになってたまらなく痛くなってくる。時々立ちあがって汗を拭き、腰を伸ばさずにはいられない。除草機や除草剤が普及するまで、百姓はみなそうやって稲を育てた。百姓はたいてい夫婦か身内で働く。そうした辛い作業だから、夫婦は無駄口をたたく余裕などない。黙々と進む作業と、田の広がりが感じられる句である。別の田んぼでもやはり夫婦が田んぼに這いつくばっているのだろう。農作業をするのにペチャクチャしゃべくってなどいられない。掲出句のような風景は、年々失われてきたものの一つ。平凡な詠い方のなかに、強く心引きこまれるものがある。四迷には「物云はて早苗取りゐる夫婦かな」という句もある。俳句にも熱心だった四迷は「俳諧日録」を書き、「俳諧はたのしみを旨とするもの」と言い切っている。『二葉亭四迷全集』(1986)所収。(八木忠栄)




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