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July 1572007

 隣る世へ道がありさう落し文

                           手塚美佐

語は「落し文」、夏です。おそらく歳時記を読むことがなければ、出会うことのなかった名前です。動物です。昆虫のことです。オトシブミ科というものがあるということです。辞書を調べると、「クヌギ・ナラなどの葉を巻いて巻物の書状に似た巣を作り、卵を産みつける。その後、切って地上に落とす」とあります。なんとも風流な名前です。むろん虫にとっては、「落し文」だのなんだのという理屈は関係ないのですが、卵を葉に巻くという行為は、自分の子を守ろうとする本能に支えられてのものであり、その名に負けぬ深い思いを、感じることが出来ます。巻いた葉に文字は書かれていなくても、その行為には、親の切なる願いが込められていることは間違いがありません。掲句、「隣る世」とは、次の世代とでもいう意味でしょうか。作者は「落し文」を地上に見つけて、この文が宛てられた先の世界を想像しています。「隣」という語が、子が親に接触するあたたかな近さを感じさせます。さらに作者自身の生きてゆく先の可能性をも、明るく想像しているのでしょうか。虫にとっては手元から「落す」という行為ですが、それはまぎれもなく子を、自然の摂理へ両腕を挙げて捧げあげることの、言い換えのように感じられます。『生と死の歳時記』(1999・法研)所載。(松下育男)




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