季語が青峰忌の句

June 2862007

 練馬区のトマト馬鈴薯夏青し

                           嶋田洋一

馬区は昭和22年(1947年)に板橋区から分かれ、23番目の区として誕生したそうだ。今年の8月1日に60周年を迎える。うちの近くの駅前商店街には色とりどりのアニメの主人公を描いた旗が下がり「練馬区独立60周年」と晴れやかな文字が躍っている。調べてみると練馬区には漫画家がたくさん居住しており、アニメ関連事業に関しては日本一らしい。それにしても国家の分離独立を祝うように区の記念行事が開催されるなんて大げさに思えるが、行政の都合で消されてゆく区や町が多い中、確かにめでたいことだ。練馬区は東京23区のうちでも緑地面積が一番大きく、今も広々とした畑がところどころに残っている。掲載句が作られた昭和20年後半から30年あたりは見渡す限りの田園風景だったろう。トマトもジャガイモもまだ固く小さいが、これから夏の日を受けてどんどん大きくなってゆく。下五の「夏青し」にそんな畑の様子とともに初夏から盛夏にかけて吹く風の匂いが感じられる。牛込から練馬に転居した都会育ちの洋一は広々とした景色に心を弾ませている。洋一は父青峰の主宰する『土上』を中心に俳句を始めた。その父は六十歳のとき新興俳句弾圧事件で不当な検挙を受け、留置所内で喀血。釈放後まもなく病死した。「夜半の頭を庭木擦りゆく青峰忌」『現代俳句全集 六巻』(1958)所載。(三宅やよい)




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