総務相らは自らを「放送監督官」と勘違いしていないか(22日「東京新聞」社説)。(哲




2007ソスN2ソスソス23ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 2322007

 時計屋の時計春の夜どれがほんと

                           久保田万太郎

句という土俵をこんなに広くみせることのできる俳人はめったにいない。俳句は難しい。季題を用い、その本意を意識し、類想はないか、切れ字は的確か、切れは多すぎないか、一七音は余らぬよう、足らざるなきよう。さまざまの条件を意識し、それらをみずからの表現に課すたびに句は硬直化し、理想的な細部を寄せ集めたあげくまったく個性のない合成写真の顔のような作品ができあがる。そこに陥らぬよう意識して、大らかに作ったように見せかけようとすると余計ドツボにはまる。一時、若手と言われる世代でも、大正時代の俳句の大らかさに学ぼうなどというテーマが流行ったが、知的に繊細な技術を駆使して「大らかさ」を出そうとするのはピストルで戦艦を狙うのと同じかもしれない。時代が違うから、社会的存在である人間自体が違う。現代には現代の感性があり、今の感性に沿った今の文体が必要なのだ。この句、切れは二つ目の「時計」のところ。「春の夜」は微妙に下句につながる。「どれがほんと」は口語。破調でも独自のリズムがあり、口語でも季題の本意は崩さない。こんな「かわいい」句を明治二十二年生まれの人に作られたひにゃ今の「かわいい」はどう作りゃいいんだよお。「俳句現代・読本久保田万太郎」(2001年3月号)所載。(今井 聖)


February 2222007

 春光や家なき人も物を干す

                           和田 誠

光は春の訪れを告げ、物みな輝かす明るさを持った光。まだ寒く冷たい風が吹き荒れる日も多いけど、黒い古瓦に照り返す日差しがまぶしい。小学生のときに読んだ『家なき子』は少年レミが生き別れた親を探す話だったが、現在の「家なき人」は住みどころなく仮住まいを余儀なくされている人たちだろう。公園の片隅や川の土手にありあわせの材料で小屋を建てる。多重債務。家庭崩壊。病気。失職。自ら競争社会に見切りをつけた人もいるかもしれない。酷薄な福祉環境へ変わりつつある今の日本では明日どんな運命が待ち構えているかわかったものではない。ホームレスではなく「家なき人」と表現したところに既成の言葉に寄りかからない作者の見方が表れているように思う。仮住まいをしている人たちにも生活がある。春の光があふれる公園で、冬の間に湿った蒲団を干し、ありったけの服を洗濯する。何年前だったか、とある春の午後、隅田川の土手に仮住まいをしているおじさんが家財道具を干し出したそばの椅子に腰掛け、上流に向う水上バスにしきりに手を振っているのを見たことがある。水上バスのデッキに出ている人達も笑顔で手を振り返す。春日はきらきらと隅田川の川面に光り、手を振る人も白い水上バスも景色の中に輝いて見えた。『白い嘘』(2002)所収。(三宅やよい)


February 2122007

 寄席の木戸あいて春めく日なりけり

                           入船亭扇橋

席の客席は映画館や劇場とちがって真っ暗ではない。薄明かりのなかで、白昼から三味線が鳴り、鉦太鼓が響き、亭内には赤い提灯がずらり。そのうえ笑いが絶えない。こんなスペースは他にはない。寒さがゆるんでくる時季になれば、亭内の空気も一層やわらいでくる。客の身なりも然り。以前ならば、「らっしゃいー」という木戸番の爺さんの威勢のいい声が、雰囲気を盛りあげていた。木戸をくぐれば、笑いもどこやら春めいてやわらぎを増し、高座の演し物も春にふさわしい噺がならぶ。いつも楽屋入りしている落語家が、木戸をあけて出入りする客にふと春めいた気配を感じとったのだろう。「さて、今日あたりは『長屋の花見』でも伺うか・・・・」とか。高座にも客席にも、ぬくい空気がふくらみを広がってくる結構な時季である。楽屋でも春めいた洒落が立ったり座ったりしているにちがいない。掲出句はそうした“春”をさらりと詠んで、屈託ない。九代目扇橋は名人桂三木助(三代目)に入門した。句歴は古く、すでに小学校6年生の頃に運座に参加して、商品に団扇や味噌をもらったりしていた。十代で「馬酔木」に投句。秋桜子編『季語集』には「溝蕎麦の花淡し吾が立つ影も」「山吹に少女の雨具透きとほる」の二句が収載されている。俳号は光石。現在、東京やなぎ句会の宗匠。俳句については「喜び、悲しみ、笑い、叫び、怒り、憎しみ、たわむれ――すべてをすっぽり包み込んでしまう俳句は、本当に偉大な風呂敷である」と書く。今も元気でまめに寄席に出演し、飄々とした枯淡の味わいが、独自の滑稽味をにじませている。『扇橋歳時記』(1990)所収。(八木忠栄)




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