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February 1422007

 雪崩るゝよ盆地の闇をゆるがして

                           藤沢周平

語は「雪崩るゝ」で春。雪崩はちょろちょろとしたほんの小規模のものから、天地をゆるがすような大雪崩までいろいろである。大雪だったのだろう、ようやく春を迎えようという時季に、寝静まった盆地の村の闇の夜をゆるがすような雪崩が突如起こる。「ゆるがして」といっても、盆地の一村が埋まってしまうほどの大規模のものではあるまい。しかし、盆地の斜面をドドドーッとずり落ちる雪崩の音に、安眠を破られた住人たちの驚きが暗闇のなかに見え隠れしている。静かな闇をゆさぶり起こす、まさに白い軍団。それでも、「雪崩るゝよ」の「よ」が、雪崩がそれほどスケールの大きいものではないことを物語っている。いったん目を覚まされた者も再び眠りに就き、おっとりした者は寝床のなかで「今夜も、またか」などと呟いて再び白河夜船か。手もとの歳時記に「雪崩です沈みゆく白い軍艦です」(田中芥子)というモダンな俳句が載っていて、ちょっと気になった。ほほう、軍艦ですか? 時代小説の名手藤沢周平は若い頃、野火止川近くの病院で療養中に賞味一年半ばかり、誘われて俳句を作ったことがあった。振りかえって「作句の方はのびなかった」「才能に見切りをつけた」とエッセイに書いている。「軒を出て狗寒月に照らされる」などは時代小説の一齣を思わせるが、やはり大立ち回りというよりは淡々と詠んだ句が多い。俳句は作るよりも読むほうにウエイトを置いたらしい。人事よりも自然のほうに心動かされたという。のちに小説「一茶」を書き、舞台化もされた。『藤沢周平句集』(1999)所収。(八木忠栄)




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