暖冬とはいうものの、やはり早朝のゴミ出しのときは寒い。今朝は瓶とか缶とかの日です。(哲




2007ソスN1ソスソス23ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

January 2312007

 とどのつまり置いてきぼりや雪兎

                           大木孝子

どのつまりの「とど」とは漢字で魚ヘンに老と書くそうだ。広辞苑では「鯔(ぼら)が更に成長したものの称」とある。出世魚鯔の行き着く先が「とど」という聞き慣れない名前となり、頂点を極めたはずの「とどのつまり」が、どちらかというと思わしくない方向に傾く言葉になっているとは不思議なものだ。掲句は迫力の「とどのつまり」に、悲しみのニュアンスをまとう「置いてきぼり」と続くところで、まるで童話のなかの森をさまよう子供たちのような景色となった。通学途中や旅先で、手なぐさみで作った雪うさぎを持ち歩くことはできないが、かといってそのままぎゅっと押しつぶし、雪玉にして遠くに投げつけるようなことは決してしない。雪うさぎは、手のひらの中でつぶらな瞳を持つ雪の生きものとして生まれたのだ。道中携えることの叶わぬ雪うさぎは、結局そのあたりの一番おだやかな場所にそっと置き去りにされる。そのささやかなうしろめたさが、彼らに永遠の命を灯すのだろう。持ち帰ろうとすれば「置いてけ、置いてけ」と呼ぶ声もどこからか聞こえてきそうな、無垢の世界にしか住むことができない雪の精である。ある冬の日、庭の雪をひと掬いして作った雪うさぎの、あまりの可愛らしさに室内に持ち込み、あろうことかテレビの上に置いて眺めていたら、みるみるうちに白い皿に浮く笹の葉2枚と南天の実2粒という姿となった。そのわずかな色彩がことのほか悲しかった。やはり野に置け雪うさぎ。『あやめ占』(2006)所収。(土肥あき子)


January 2212007

 家族八人げん魚汁つるつるつる

                           齋藤美規

語は「げん魚(幻魚)汁」で冬。幻魚は、日本海からオホーツク海の深海に棲息している。「下の下の魚」という意味から「げんげ」がそもそもの呼び名らしいが、昔はズワイガニ漁で混獲されたりしても、みな捨てられていたという。したがって、「げん魚汁」も決して上等の料理ではないだろう。食べたことがあるが、お世辞にも美味いとは言えない代物だった。身は柔らかいというよりもぶよぶよした感じで、骨は逆にひどく硬い。でも、これを干物にすると驚くほど美味くなるという人もいるけれど……。句は寒い晩に、そんな汁を大家族が「つるつるつる」と飲み込むように食べている図だ。大人たちは一日の労働を終えて疲れきっており、大きな椀を抱えるようにして、黙々と啜っている情景が浮かんでくる。ただこの句を紹介している宮坂静生が作者に聞いたところによれば、子供のころに食べた淡泊な味が忘れられないというから、作者自身は味や歯触りを気に入っていたようだ。だが、そういうことを考慮に入れたとしても、この句から浮き上がってくるのは、昔の貧しい家庭の夕食光景だと言って差し支えないと思う。寒い土地で肩を寄せ合うようにして暮している家族の様子が、さながらゴッホの「馬鈴薯を食べる人たち」のように鮮やかに見えてくる。宮坂静生『語りかける季語 ゆるやかな日本』(2007・岩波書店)所載。(清水哲男)


January 2112007

 木枯や煙突に枝はなかりけり

                           岡崎清一郎

人、岡崎清一郎の句です。季語は木枯らし、冬です。語源は、「木を枯らす」からきているとも言われています。「この風が吹くと、枝の木の葉は残らず飛び散り、散り敷いた落ち葉もところ定めずさまよう」と、手元の歳時記には解説があります。垂直に立つ煙突を、木枯らしは横様に吹きすぎます。煙突を、枝のない木と発想するところから、この句は生まれました。その発想自体は、それほどめずらしいものではありません。しかし、木という言葉と、煙突という言葉の間に、「木枯らし」を吹かせたことで、空を支える三者につながりができ、その言葉の組み合わせが、物語をつむぎだす結果になりました。まるで、煙突にはもともと枝葉があって、木枯らしに吹かれたために、今のような姿になったかのようです。冬空に高くそびえ、寒さに耐える煙突の姿は、たしかにいたいたしくもあります。それはそのまま、コートのポケットに手を入れて冷たい風の中にたたずむ老いた人のようでもあります。かつて、友人や家族という枝葉に囲まれて、遮二無二生きてきた日々を、その人は路上に立って思い返している。と、そこまで読み取る必要はないのかもしれません。しかし、この句を読めば、だれしもの頭の中に、しんとした物語が始まってしまうはずです。『詩のある俳句』(1992・飯塚書店)所載。(松下育男)




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