年金資金144億パー、酒販中央会元事務局長を再逮捕。ずさんな管理もここまでくると。




2006ソスN2ソスソス17ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 1722006

 春めきて沢庵うまき膳に坐す

                           前島長路

語は「春めく」。春めいてきたことへの喜びを、まるで鷲づかみにしたような詠みぶりが好もしい。骨太い句だ。ごく日常的な朝餉の膳だろう。うまい「沢庵(たくあん)」と熱々の味噌汁と、そして炊きたてのご飯とおかずが一品ほど……。もうこれくらいで十分に満足なのは、やはり春めいてきた陽気のおかげなのであり、そしてなによりも作者が健康であることの証左でもある。どこにもそんなことは書いてないけれど、この句にはこれから表に出て行く張り切った気持ちも滲んでいる。遊びに行くわけじゃない。いつものようにいつもの仕事のために出かけるだけなのだが、その気分が春めいてきたことによって高められているわけだ。「春めく」の句には、たとえば飯田蛇笏の「春めきてものの果てなる空の色」のように繊細で抽象的な佳句が多いなかで、掲句のごとくずばりと具象性を貫いた句は案外に珍しいし、読後すぐに腑に落ちて気持ちが良い。うまい沢庵といえば、子供の頃のは自家製だったし、他にうまいものの味を知らなかったせいもあるのだろうが、やはりうまかった。食事がすんでから、一切れ齧ってお茶を飲んだときのあの味を、もう一度味わってみたいとは思うけれど、最近はうまい沢庵がないのが残念だ。『俳諧歳時記・春』(1968・新潮文庫)所載。(清水哲男)


February 1622006

 捕虜われに老いし母あり春の雲

                           塩尻青笳

語は「春の雲」。ふわりと浮いて、淡い愁いを含んだような綿雲はいかにも春の雲らしい。この句の決め手になるのは、「捕虜(ほりょ)」でもなければ「老いし母」でもない。一見何の変哲もない「春の雲」だ。もとより「捕虜」にも「老いし母」にも、のっぴきならない現実として重いものがあるが、逆に言えば、もうこの取り合わせだけで俳句の九割はできてしまっている。そこに季感を与えるべく下五に季語を置くわけだが、このときに数ある春の季語のなかから何を持ってくればよいのかは、大いに迷うところだろう。というのも、テーマからしてつき過ぎになる季語は多そうだし、かといってあまりに突飛なものでは中身がそこなわれてしまいそうだからだ。悩ましい考えどころである。そこで偉そうなふうに言うことになるけれど、こういうときにはかえって何も考えないほうがよいのだと思う。あれこれ考えてしまうと、句のどこかから作為が洩れ見えてしまい、せっかくの題材が濁ってしまいかねない。そこで作者は、見たままそのままの何でもない「春の雲」を据えることで、名状し難いほどに切ない胸中を濁りなく吐露し得たのだった。と同時に、気がつけば、この「春の雲」の存在感のしっかりしていることよ。それは掲句が構想される以前から、作者の眼前に浮かんでいたようではないか。こういうことを書いたのは、他でもない。多くの句を読んでいると、あたら良い題材を掴みながらも、それを作為でつぶしてしまっている例が目立つからである。厳密に言えば作為のない句などはあり得ないが、極力それは排除されるべきだろう。『天山』(1965)所収。(清水哲男)


February 1522006

 馬鹿に陽気な薬屋にいて四月馬鹿

                           清水哲男

生日特権(笑)で、ご迷惑は承知の助で拙句をお読みいただく。新しい句にしたかったのだけれど、何も浮かんでこない。「68歳かあ……」と、何度も陰気につぶやくばかり。仕方がないので、時期外れながら掲句を。八年前の余白句会(1998年3月)に持っていった句だ。自注をつけるほどの句じゃないし、幸い騒々子(井川博年)のレポートがあるので、あわせて読んでください。「巷児の天。騒々子の人。マツモトキヨシのような今風な薬屋でとまどっている男。バカとバカが重なってさらに馬鹿。新しい、面白い。巷児師が天に入れた訳です。バカは東京人の口癖だ、と京都人の道草がぽつり。この句よりも点の入った『砂を吐く浅蜊のごとく猫ねむる』は貨物船、裏通、青蛙の地。うるさ方が点入れている。選後、作者の、猫ってぐしゃっとした感じで眠ってるじゃない、との説明あり。猫に詳しい訳はあとでわかる。/赤帆・清水哲男、2月に地元の吉祥寺に新しく生まれた出版社・出窓社より詩の本『詩に踏まれた猫』を出す。帯にある「ネコとマゴの詩にロクなものはない」には笑ってしまった。巻末の「猫と現代」という猫好き女性との座談会が傑作。この本で4月12日の「朝日新聞」の読書欄「著者に会いたい」コーナーに登場。それにしても、顔写真の下にある 〔清水哲男さん(60)〕とは! 清水哲男、還暦なり」。ああ、八年前は還暦だったのか、それにまだ貨物船(辻征夫)が元気にしゃべってたんだ。などと思うと、八年前でももはや茫々の感がある。トシを取るのが嫌になってくる。時間よ、止まれ。『打つや太鼓』(2003)所収。(清水哲男)




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