あちらのプレーオフは放送するが日本のは放送しない。さすがは「みなさまのNHK」だ。




2005ソスN10ソスソス17ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

October 17102005

 秋の波鳶の激しさときに見ゆ

                           福田甲子雄

語は「秋の波」、「秋の海」に分類。高い秋空の下に広がる爽やかな海。浜辺も、そこに寄せる波も、夏に比べると清澄である。やや淋しい感じがするけれど、だから好きだという人は多い。私も、その一人だ。掲句は、そんな静かで平和な風景を切り裂くように、ときに「鳶(とび)」が激しい動きを見せると言うのである。それまでは静かな風景の一部に溶け込んでいた鳶が、いきなり秋の波をめがけて急降下してくる。魚の死体だろうか、餌を発見して、それをかっさらうためだ。この静と動の鮮やかな対比は、そのまま自然の奥深さを指差しているだろう。鳶は、なにも秋の波を引き立てるために飛んでいるわけじゃない。すなわち、自然は人間の思惑通りにあるのではないということだ。しかし作者は、「ときに」そうした荒々しい動きがあるからこそ、なおいっそう静かな秋の波に魅入られているのだろう。ところで、昔の人は秋の波を女性の涼しげな目に見立てて、「秋波(しゅうは)」と言った。が、「いつの間にか、女性が媚を含んだ目で見つめたり、流し目を使ったりすることを『秋波を送る』というようになりました。/最近では、異性関係以外でも使われますが、男性が女性へ『秋波を送る』とはいいません」(山下景子『美人の日本語』)。なぜ、そうなってしまったのか。大いに気になるが、この本に説明はなかった。ご存知の方、おられますでしょうか。『合本俳句歳時記・第三版』(1997・角川書店)所載。(清水哲男)


October 16102005

 忙しなく秋刀魚食べ了へひとりかな

                           ともたけりつ子

語は「秋刀魚」で秋。句集の内容から推して、作者は若い独身女性のようだ。仕事を持ち、ひとり暮らしをしている。仕事帰りに、初物の「秋刀魚」をもとめてきたのだろう。せっかくの季節の物だから、ちゃんと大根おろしを添え、柚子かレモンの汁を滴らせたにちがいない。だが、いざ食べる段になると、季節感をじっくり味わうというのでもなく、いつものように「忙(せわ)しなく」食べ了(お)えてしまった。もはや習い性となってしまったそんな食べ方に、つくづくと「ひとり」を感じさせられている。私の独身時代を思い起こしてみても、似たようなものだった。とにかく「食べておかなければ」という意識が強く、旬の物であれ何であれ、そそくさと食べる癖がついてしまうのだ。言うならば、ちょっと中腰のままで食べる感じである。「秋刀魚の歌」の佐藤春夫みたいに色模様もないので、「男ありて/今日の夕餉に/ひとりさんまを食ひて/思ひにふけると」なんて情趣は湧いてこない。句に戻れば、だから作者の「ひとりかな」という表現は、寂寥感を押し出して言っているのではなく、一抹の寂しさを伴ってはいるが、その内実は「苦笑」に近いと思う。「ひとり」の自分を客観視して詠んでいるところが、掲句のポイントである。『風の中の私』(2005)所収。(清水哲男)


October 15102005

 底紅や人類老いて傘の下

                           高山れおな

語は「底紅(そこべに)」で秋。「木槿(むくげ)」のこと。なるほど、木槿の花は中央の「底」の部分が「紅」色をしている。句の前書きによれば、若くして世を去った俳人・摂津幸彦七回忌法要の折りの作句だ。「蕭々たる冷雨、満目の木槿」だったという。それでなくとも心の沈む法要の日に、冷たい雨が降りつづき、しかも折りからたくさんの底紅が咲いていた。『和漢三才図絵』に「すべて木槿花は朝開きて、日中もまた萎(しぼ)まず、暮に及んで凋(しぼ)み落ち、翌日は再び開かず。まことにこれ槿花一日の栄なり」とあるように、昔から底紅(木槿)ははかないものの例えとされてきた。冷雨に底紅。参列した人たちはみな「傘」をさしていたわけだが、作者は自分も含めて、そこにいた人たちを「人類」とまとめている。すなわち人間の命のはかなさの前では、人それぞれの性や顔かたちの違いや個性や思想のそれなどにはほとんど意味が無く、生きて集まってきた人たちは「人類」と一括りに感じられると言うのである。その「人類」が故人の生きた日よりもさらに「老いて」「傘の下」に、いまこうして黙々と立っているのだ。虚無というのではなく、それを突き抜けてくるような自然の摂理に従わざるを得ない人間存在を実感させられる句だ。思わずも、襟を掻き合わせたくなってくる。『荒東雜詩』(2005)所収。(清水哲男)




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