新規インターネット・ユーザーで最も多いのが2歳〜5歳の子供。とはアメリカの話だが。




2005ソスN6ソスソス14ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 1462005

 目まといの如く前行く日傘かな

                           日高二男

語は「日傘」で夏。「目まとい(目纏い)」は、夏の野道などで目の前を飛び交いつきまとうユスリカなどの小虫を言い、これも夏の季語だ。「まくなぎ」とも。人同士がやっとすれ違えるほどの細い道を、作者は少し急ぎ足で歩いているのだろう。ところが前を行く「日傘」の女性が、右に左に揺れるように歩いていて、なかなか追い越せない。その彼女の様子がまるで「目まとい」のようだなと、ふと思いつき、苦笑している図だ。我が家の近所の歩道もかなり細いので、こういうことがまま起きる。よほど急いでいるときには「すみません」と声をかけざるを得ないけれど、たいていの場合には仕方なく二三歩離れてついていく。そのうちに気づいてくれるだろうと思い、むろん気づいてくれる人のほうが多いのだが、なかにはまったく背後の気配を感じない人もいたりして、苦笑が苛立ちになることもある。おそらく何か考え事をしているのか、一種の放心状態にあるのか、べつに鈍感というわけではないのだろうが、天下の往来にはいろいろな人が歩いているものだ。それにつけても細い道では、歩行者ばかりではなく自転車の人も加わるので、苛立ちどころか物理的な危険を感じることもある。夜中に背後から無灯火ですうっとやってきて、ベルも鳴らさずものも言わずにすり抜けていく奴がいる。先方にはこちらが「目まとい」なのだろうが、それとこれとは話が別だ。『四季吟詠句集19』(2005・東京四季出版)所載。(清水哲男)


June 1362005

 出来たての夏雲かじる麒麟かな

                           津田ひびき

く晴れた日の動物園だ。長い首を伸ばして、麒麟(きりん)が「出来たての夏の雲」をかじっている。「出来たての」、つまりいちばんふわふわとして美味しそうな雲を食べているのだ。真っ青な空に黄色い麒麟が印象的で、そういうことも含めて、ちょっと谷内六郎の一連の絵を想わせる。掲句も谷内の絵も、いわば童心で描いた世界として微笑する読者は多いだろう。ところで私はへそ曲がりのせいか、一口に童心の所産とまとめて、そこで終わってしまうことには違和感がある。当たり前のことながら、これらは子供の表現ではなく、れっきとした大人の発想による世界だからだ。大人である作者が、わざわざ子供の心をくぐらせて得た世界である。だから、谷内の絵がどこか哀調を帯びているのに似て、掲句もまた単純におおらかであるとは言い切れない。この麒麟、想像すればするほどに、悲しげな目をしているような感じがしてくる。このときに出来たての夏雲は、遠いふるさとの大空の雲なのではあるまいか。その雲にいま懸命に舌を伸ばしているのかと思えば、切なくなってくる。作者が故意に童心をくぐらせたのは、情景に無垢なまなざしを仮設することで、見えてくる真実を確かめたかったのだと思う。子供には絶対に見えるはずのない真実が、かつて子供であった者には童心のフィルターを通して見えてくるという皮肉な回路は、やはり切ないなと言うしかない。『玩具箱』(2005)所収。(清水哲男)


June 1262005

 だんだんにけぶりて梅雨の木となれり

                           石田勝彦

語は「梅雨」で夏。しとしとと降りはじめた六月の雨。青葉の盛んな木は、はじめのうちは雨にあらがうような様子を見せていた。が、それもひそやかな雨に「だんだんに」けぶってゆくうちに、いつしかしっくりと梅雨に似合う木と化したと言うのである。句意はこんなところだろうが、私なりの掲句への関心は、作者が何故このような情景を詠んだのかという点にある。というのも、この情景は格別に新鮮でもなければ意外性があるわけでもないからだ。なのに、この素材で一句を構えた作者の発想の根っ子には何があるのだろうか。句にするからには、作者はこのいわば平凡な情景に面白さを覚えていることになる。その意識の先には、煎じ詰めれば自然の秩序への憧憬といったものがあるのだろう。いろいろな現象や事物が、収まるべきところに収まる。この自然の秩序に目が向くのは、やはり作者自身も収まるところに収まりたいからだと言える。つまり作者は人であって木ではないけれど、こうした情景に触れるにつけ、人であるよりもむしろ木でありたいと願望するのだ。言い換えれば、小癪な人智で自然に拮抗するのではなく、人智を離れて自然に同化したい心持ちからの作である。八十歳を越えた作者の年輪が、しみじみと腑に落ちる一句だ。『秋興以後』(2005)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます