日本人拘束。外人部隊と聞いて,「カスバの女」を思い出したのは不謹慎でしょうか。




2005ソスN5ソスソス13ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 1352005

 白服にプラットフォームの端好む

                           田中灯京

語は「白服」で夏、「夏服」に分類。今日から「白服」に着替えたのだろう。男は女性ほどひんぱんに色調の異なる服には替えないので、着替えた当座はなんとなく照れくさいものだ。べつに誰が見ているわけでもないのに、あまり人の目につかないようなところを選びたくなる。そんな感じで、作者も自然に「プラットフォームの端」に足が向いたのだった。が、端っこに立っていても、どうも落ち着かない。面映いような気持ちだけが募ってくる。わかりますねえ。私はそういうときでなくても端が好きで、ひとりのときはいつも最後尾から乗車する。駅のどのあたりで待つかは、性格によるんだぜ。大学時代に友人からそう言われて、はっとしたことを思い出した。友人の説によれば、内向的な人間、引っ込み思案の人間は、たいてい端に立つ。それも先頭ではなく、最後尾のほうの端だということで、見事に当っているなと合点したのだった。それからしばらくというもの、ならば引っ込み思案を少しでも直そうとして、真ん中へんで待つことに努力したのだけれど、あえなく挫折。どうも、端でないと落ち着けなかったからだ。そういえば、別の友人で、いつも同じ位置に乗り合わせた女性と結婚したヤツもいたっけ。同じ性格だから、大いに気が合ったのだろう。『新歳時記・夏』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)


May 1252005

 緑蔭に低唱「リンデン・バウム」と云ふ

                           上田五千石

語は「緑蔭(りょくいん)」で夏。青葉の木陰は心地よい。二通りに解せる句で、ひとつは、緑蔭で誰かが低く歌っている「リンデン・バウム」が聞こえてきたという解釈と、もう一つは自分で歌っているという解釈だ。私は「緑蔭に」の「に」を重視して、自分が口ずさんでいると取る。ほとんど鼻歌のように、何の必然性もなく口をついて出てきた歌。それがシューベルトの名曲「リンデン・バウム」だったわけだが、作者はその曲名をあらためて胸の内で「云ふ」ことにより、美しい歌の世界にしばしうっとりとしたのだろう。あるいはこの曲にはじめて接した少年時代への懐旧の念が、ふわっとわいてきたのかもしれない。いずれにしても、ちょっとセンチメンタルな青春の甘さが漂っている句だ。♪泉に沿いて繁る菩提樹……。私は中学二年のときに習ったが、この曲を思い出すと、教室に貼ってあった大きなシューベルトの肖像画とともに、往時のあれこれがしのばれて、胸がキュンとなる。学校にピアノはなく、オルガンで教えてもらった。ところで「リンデン・バウム」を菩提樹と訳したのは堀内敬三だが、ドイツあたりではよく見かけるこの樹は、お釈迦様の菩提樹とも日本の寺院などの菩提樹とも雰囲気がかなり違う。両者の共通点は同じシナノキ科に属するところにはあるのだけれど、この訳で良かったのかどうか。もっとも「菩提樹」という宗教的な広がりを感じさせる訳だったからこそ、日本にもこの歌が定着したとも言えそうだが。『田園』(1968)所収。(清水哲男)


May 1152005

 若菜から青葉へぽつんと駅がある

                           富田敏子

語は「青葉」で夏。「若菜」もそのように思えるが、俳句で「若菜」は新年の季語だ。七草粥に入れる春草を言う。しかし、この句ではそうした正月の七草ではなく、なんとなく春の雰囲気を帯びた草の総称として使われているので、季語と解さないほうがよいだろう。初夏のローカル線での情景。作者は車中にあって、窓外の景色を眺めている。広々とした平野にはどこまでも薄緑の春の草が広がっていて、心地よい。そのうちに列車は山間にさしかかり、今度は木々の緑が美しく目に飛び込んできた。これからしばらくは、この青葉をぬって進んでいくのである。その「若菜」と「青葉」の景色が切り替わるあたりの「駅」で、列車はしばし停車した。無人駅かもしれない。それはいかにも唐突に「こんなところに駅が」という感じで「ぽつん」と立っており、乗降客も見当たらないようだ。私の故郷の山口線にも、昔はそんな駅がいくつかあった。この句の良さは、もちろん「若菜から青葉へ」の措辞にあるわけで、物理的には平野部から山間部への移動空間を指し示しているのと同時に、他方では春から夏への時間的な移ろいを表現している。その時空間がまさに変化しようとしている境界に、ぽつんとある駅。駅自体はちっぽけなのだけれど、存在感は不思議に重く感じられる。作者のセンスの良さが、きらっと輝いている句だ。『ものくろうむ』(2003)所収。(清水哲男)




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