ライブ対フジ。結局はメディア構造改革は二の次の泥仕合。期待したほうが馬鹿でした。




2005ソスN4ソスソス20ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 2042005

 小酒屋の皿に春行く卵かな

                           常世田長翠

語は「春行く(「行く春」「逝春」などとも)」。別の季語「暮の春」と同じ時期のことを言うが、「春行く」というと春を惜しむ詠嘆が加わる。江戸期の句。昼下がり。旅の途中で、街道沿いの「小酒屋」の縁台にでも腰を下ろして小休止している図だろう。親爺に一本つけてもらって、茹で卵を肴にちびちびとやっている。束の間の旅の楽しみ、道行く人を眺めたり、黄を散らしている周辺の山吹をあらためて眺めやったり……。そして手元の「皿」には、真っ白な卵の影がやわらかくさしている。そろそろ今年の春もおしまいだな。そんな様子と気分を、軽やかにも自然な調子で「皿に春行く」と言い止めた。読者に、何の技巧的な企みも感じさせない技巧。実に見事なものではないか。この句と作者については、俳誌「梟」(2005年4月号)ではじめて知った。作者のプロフィールを、矢島渚男の紹介文からそのまま引いておく。「常世田長翠(とこよだちょうすい・1730〜1813)は下総の国匝瑳(そうさ)郡の出身。加舎白雄第一の弟子となり、その春秋庵を継いだが三年ほどで人に譲って流浪し、晩年は出羽の国に送った。この句は酒田市光丘図書館所蔵『長翠自筆句帳』に収められている」。となれば、掲句は流浪の途次での即吟か。急ぐ旅でもないだけに、句にたしかな余裕があり腰が坐っている。(清水哲男)


April 1942005

 骨壺の蓋のあきゐる朧月

                           川村智香子

語は「朧月(おぼろづき)」で春。柔らかく甘く霞んだような春の月のこと。句は実景であっても、そうでなくてもよいだろう。安置された「骨壺」には、まだ逝って間もない人の骨が入っている。なぜ「蓋」があいているのかはわからない。実景だとすれば、たまたま何かの拍子にあいてしまったのが、そのままになっていたのだ。実景でないとすれば、なおこの世にとどまっている霊魂が内側からそっと押し上げたのかもしれない。いずれにしても、掲句は幻想的な春の浮き世の空間に、冷厳なる死という現実をかすかに触れ合わせることにより、読者の心胆をゆすぶることに成功している。朧月にふうわりとした情緒を感じる人も心も、やがては例外無く骨壺に入ることになるのだ。人はみな死ぬのだということを、艶なる春の宵に認識してしまった作者の心の震えもよく伝わってくる。句集のあとがきによれば、まだ若い日に義兄がたった三ヶ月の入院の後で亡くなってしまい、急に死が身近に感じられ、そのことが後の句作りへのきっかけになったとある。だから、その折りのことを思い出しての句かもしれない。では、句が実景だとして、作者はこのときに蓋をしめただろうか。私は、すぐにはしめられなかったと思う。死を身近に感じた生者は、その瞬間にほとんど死の入り口に立ったようなものだからだ。骨壺のなかにいるのが半分くらいはおのれ自身であるときに、簡単には蓋をしめられるわけがないのである。『空箱(からばこ)』(2005)所収。(清水哲男)


April 1842005

 人の声花の骸を掃きをれば

                           清水径子

かな春の昼下がり。作者は、庭一面に散り敷いた桜の花びらを掃いている。と、どこからかかすかに「人の声」が聞こえてきた。散った桜の花びらを「花の骸(むくろ)」とは、一歩間違うと、大袈裟で仰々しい見立てにもなりかねない。だが、読者にそれをまったくあざとく思わせないところが、この句の凄さだろう。それは一にかかって、「人の声」との取り合わせによる。言うまでもないことながら、このときに「人の声」は骸に対する「生」の象徴だ。ここに人声がしなければ、作者にも花びらを骸とみなす意識は生まれなかったはずである。すなわち、作者ははじめから骸を掃いていたのではなくて、人声が聞こえたので、そこではじめて掃いている対象を骸と認識したのであった。「生」に呼び起こされる格好で、眼前の花びらの「死」が鮮やかに浮き上がってきたというわけだ。だから、骸という物言いにあざとさが微塵もないのである。掃く、聞こえる、掃く。同じ「掃く」という行為なのだが、前者と後者では世界が大きく異なっている。この異なりようを読者は一瞬で感じられるがゆえに、骸を素直に自然な比喩ないしは実体として受け入れることができる。わずか方数尺でしかない掃き寄せの空間に、生と死の移ろいを静かに的確にとらえてみせた腕前には唸らされた。『清水径子全句集』(2005・清水径子全句集刊行会)所収。(清水哲男)




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