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March 2932005

 春霰へグラビア雑誌かざしけり

                           松村武雄

語は「春霰(しゅんさん)」,「春の霰(あられ)」に分類。ときに大粒のものが降り,せっかく塗った田の畦に穴をあけたり,木の芽や若葉を傷めたりすることがある。そんなときならぬ春の霰に,咄嗟に「グラビア雑誌」をかざしたと言うのである。むろん、カバンのなかからわざわざ雑誌を取り出したのではなく、さっきまでたとえば電車のなかで開いていたのを、そのまま手にしていたのだ。かざしたのがカバンや新聞だったらさほど絵にはならないけれど、たまたまグラビア雑誌だったので、絵になり句になった。その薄くて大判の雑誌の表紙には,華やかな春の景物が載せられていただろう。かざしながら訝しげに上空を見やる作者の目には,にわかにかき曇った灰色の空と明るい表紙とが同時に飛び込んでいる。パラパラと表紙をうつ霰の音もする。この季節外れの自然のいたずらは、しかし作者にはちっとも不快ではない。どこかで、春の椿事を楽しんでいる様子すらうかがえる。それもこれもが、やはりグラビア誌の明るい表紙のおかげだと読めた。グラビア誌といえば、数年前に「アサヒグラフ」が休刊して以来,この国から本格的なグラビア専門誌が姿を消したままになっているのは寂しい。海の向こうの代表格は,なんといっても「LIFE」だ。つい最近知ったのだが,この雑誌がヘミングウェイの『老人と海』を一挙掲載した号(1952)は,48時間で500万部以上を売り上げたという。遺句集『雪間以後』(2003)所収。(清水哲男)




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