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March 0232005

 水門に少年の日の柳鮠

                           川端茅舎

語は「柳鮠(やなぎはえ)」で春。特定の魚の名ではなく、春の十センチ足らずの、柳の葉に似た淡水魚を指す。東京あたりで「はや」といえばウグイのことだし、琵琶湖で「はい」「白はえ」というのはオイカワ(追川)の雌のことだ。また高知ではカワムツの俗称など、魚の名前は地方によって違ったりするのでややこしい。と、これは物の本の受け売りだけれど、ならば私が少年期を過ごした山口で「はえ」とか「はや」とかと呼んでいた魚は、何だったのだろうか。たしかに、形は柳の葉に似ていたから「柳鮠」という総称に入れて間違いではないだろう。小さくてすばしこくて、彼らが川に登場してくると、川端のネコヤナギもふくらんできて、ああ春なんだなあと実感したものだった。昔は川が澄んでいたから、学校帰りに飽かず覗き込んでは時を忘れた。なかでも早春の川では、メダカが泳ぎ川エビが飛び回り、動くものが増えてくるので楽しくも美しい。五年生のときだったか、その日にもらった何かの賞状をそこらへんに置いて夢中で除いていたら、あっという間に春風にさらわれて水に流されてしまったのも、懐かしい思い出だ。掲句の川は「水門」があるくらいだから、川幅は相当に広いのだろう。通りかかって気まぐれに、少年時代には無かった水門のあたりを覗いてみると、そこにはしかしちゃあんと「少年の日」そのままに「柳鮠」が元気に泳いでいた。懐かしくそして嬉しかったと、いかにも早春らしい抒情を湛えた句だ。『新歳時記・春』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)




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