中国が最大の貿易相手国に。中国がくしゃみをすると日本が風邪を引く時代も間近だ…。




2005ソスN1ソスソス27ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

January 2712005

 吸殻に火の残りをる枯野かな

                           山口珠央

語は「枯野」で冬。誰が捨てたのか、煙草の吸殻が落ちている。気になったので立ち止まってよく見ると、まだかすかに火がついたままだ。うっすらと煙も立ち上っている。あたりは一面の「枯野」原だ。危ないではないか、火事になったらどうするのだ。捨てるのならば、消えたかどうかをきちんと確認してほしいものだ。……といったような、心ない煙草のポイ捨てにいきどおっている句では、実はないだろう。作者が意図したのはおそらく、眼前に広がる枯野がどのような枯野なのかを、描写的にではなく実感的に提示したかったのだと読む。だから実際にそこに吸殻は落ちていなかったのかもしれないし、落ちていたとしても完全に火は消えていたのかもしれない。いずれにしてもそこに火の消えていない吸殻を置くことによって、見えてくるのはいかにも乾いていてよく燃えそうな枯れ木や枯れ草、枯れ葉の一群であり、それらが延々と広がっている情景だ。いかに描写を尽くそうとも伝わらないであろう実感的な情景を、小さな吸殻に残ったちいさな火一つで伝え得た作者のセンスはなかなかのものだと思う。作者の句としては、他に「トラックやポインセチアを満載に」「古物屋や路地にせり出す炬燵板」などがある。いままで知らなかった名前の人だが、こういう才能を見つけると嬉しくなってくる。煙草が美味い。「俳句」(2005年2月号・「17字の冒険者」欄)所載。(清水哲男)


January 2612005

 わが肩に霞網めく黒ショール

                           梶川みのり

ショール
語は「ショール」で冬。最近のこの国でショール(肩掛け)といえば、なんといっても成人式での和装女性のそれが目に浮かぶ。申し合わせたように誰もが白いショールを羽織っているけれど、なかなかサマになる人はいないようだ。和装のついでに肩に無理矢理乗っけているといった感じ……。むしろ無いほうがすっきりするのにと、他人事ながら気がもめることである。ま、和装それ自体に慣れていないのだから、無理もないのだろうが。ところで、掲句のショールは洋装用だろう。写真は某社の商品カタログから抜いてきたものだが、「霞網(かすみあみ)めく」というのだから、たとえばこんなアクセサリー風の感じかしらん。たまに見かけることがある。おそらく作者は普段からすっと着こなしていて、しかしあるときいつものように肩に掛けると、なんだかふっと霞網にでもかかったような気持ちになったと言うのだ。ショールが霞網に感じられたということは、纏った作者自身はからめとられた不幸な小鳥ということになる。むろんそこまで大袈裟な感覚的事態ではないのだが、そうした想いが兆す作者の心の奥底に、私は自愛と自恃のきらめきを感じる。そのきらめきが、黒いショールを透かしてちらりちらりと見え隠れしているところに、この句の魅力があるのだと思った。『転校生』(2004)所収。(清水哲男)


January 2512005

 死後初の雪見はじまる縁の家

                           摂津幸彦

語は「雪見」。平城京の昔には年中行事とされていた。高貴な人たちが初雪を賞でたわけだが、時代を経るにつれて庶民のささやかな楽しみの一つに転化した。行われるのも、とくに初雪の日とは限らない。掲句の場合も、友人知己が集っての例年当季の酒盛り程度の軽い意味だろう。自分が死んだ後も、当然のように恒例となった雪見の会が開かれている。いや、開かれるはずである。当たり前といえば当たり前のことながら、そこに自分がもう出られないと予感することは淋しくもたまらない気持ちだ。明らかに、このときの作者は自分の死期が近いことに気がついている。最近「摂津幸彦論」(「俳句」2005年1・2月号)を書いた仁平勝によれば、夫人から聞いた話として「幸彦はこの時期すでに、自分が癌であることをうすうす感づいていた」ようである。しかし、このエピソードを知らなくても、十分に作者の気持ちは伝わってくる。読み解くキーは「縁(私はあえて字余りとなる「えにし」と読んでおく)」だ。誰だって通常出入りするのは「縁の家」に決まっているから、普段はことさらに「縁」を言う必要は無い。だが作者は、あえて「縁」と付けている。すなわち、生きていてこその「縁」を強く意識し、いとおしむ気持ちが激しいからこその措辞と受け取らねばならない。したがって、近い将来にその「縁」が断たれてしまう絶望的な予感のなかで、生への執着と諦念とが交錯し明滅している一句と読めるのである。『鹿々集』(1996)所収。(清水哲男)




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