早々、仕事に追いつめられた。復元力が弱くなったのか、いつもの調子が取り戻せない。




2005ソスN1ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

January 1212005

 学校に畳の間あり歌留多かな

                           森田 峠

語は「歌留多(かるた)」で新年。歌留多にもいろいろあるが、この場合は小倉百人一首だろう。掲句を読んで、そういえば「学校に畳の間」があったようなと思い出した。「ような」と曖昧なのは、学校の畳の間といえば女の子たち専用の裁縫室というところだったので、廊下の窓越しにちらりと見た程度だからだ。転校が多かったから、どこの学校の裁縫室かも覚えていない。でも、確かにあったような……。国語の授業の一貫だろうか、それともクラブ活動なのか。歌留多には畳が必要だから、当然のように裁縫室が使われているのだ。裁縫用の低くて長い机は隅のほうに片付けられ、花びらを散らしたように歌留多が撒かれ、このときばかりは男子生徒も裁縫室にいるのだろう。普段とは違う使われ方をする教室は、文化祭などでもそうだけれど、とても新鮮な感じがする。ましてやこのときは歌留多会なので、晴れ着の生徒はいないにしても、おのずから華やいだ雰囲気となり、学校ならではの正月風景となる。「歌留多かな」の「かな」には、一般の人には目に触れない正月風景を押し出す効果もあると感じた。さきごろ、今年の全国競技歌留多クイーンの座を中学生が獲得して話題になった。一般的には若い人に見向きもされない歌留多が、こうしたトピックからでも注目されるようになればいいなと思ったことである。『逆瀬川』(1986)所収。(清水哲男)


January 1112005

 手毬真つ赤堅き大地に跳ね返り

                           河内静魚

手毬
語は「手毬(てまり)」で新年。ゴム毬ではなく、写真のような「かがり毬」だ。観光地などの売店でよく見かけるが、今ではすっかり飾り物になってしまった。「丸めた綿やハマグリの殻、ぜんまい、いもがら、こんにゃく玉、山繭、砂、小鈴などを芯(しん)にして、その上を布に五色の絹糸や綿糸でかがったものを糸鞠(かがり鞠)といい、江戸時代から少女の遊び道具として発達した。芯にいろいろなものを入れたのは、鞠に弾力性をもたせるためで、なかにはかわいらしい音を出すようにくふうしたものもある。(C)小学館」。ついてみたことはないけれど、とてもゴム毬ほどの弾力性はないだろう。江戸期の女の子は立て膝でついて遊んだそうだが、さもありなん。そんな弾まない毬が、句では「堅き大地に」カーンと跳ね返っている。「堅き大地」は凍てついた大地を連想させ、毬はその大地に何か空恐ろしいような力で叩き付けられたのである。だから、あまり弾まない毬が予想外の高さにまで跳ね返った。そして、この光景に人の気配は感じられない。無人の大地に、ひとり跳ね返った手毬の「真つ赤」な姿だけが読者の目に焼き付けられる仕掛けだ。ゴム毬にはこうした幻想性はないが、このように日本古来の毬には、どこか私たちのイマジネーションをかき立ててくるようなところがある。『花鳥』(2002)所収。(清水哲男)


January 1012005

 十日戎所詮われらは食ひ倒れ

                           岡本圭岳

日は「十日戎(とおかえびす)」。新年初の戎祭を言う。東京あたりの酉の市に対して、関西以西での商売繁盛を祈る祭りと言ってよいだろう。大阪の今宮戎神社や京都の恵美須神社、福岡の十日恵比寿神社などが有名だそうだ。が、私は学生時代に京都に住んだが、実はこの祭りのことは何も知らない。福笹を持った人を見かけた記憶も無い。最近の宵祭りには烏丸通でパレードもあると聞くが、四十数年前にはそんな派手なこともなかったせいではあるまいか。したがって耳学問程度の知識しかないのだけれど、「えべっさん」は福の神だからあやかりに行くわけだ。しかし耳が遠いとされているので、社前と社殿のうしろで二度拝む風習がある。一度だけだと聞こえなかったかもしれず、もう一度「わかってはりまんなア、商売繁盛でっせ」と大声で念を押すのだという。それから福娘に授かった福笹をかつぎ、それに沿道で売っている小判などの縁起物(吉兆)を買い求めて吊るしては、そぞろ歩くという寸法だ。句は、そんな人混みの中での即吟だろう。すなわち、こうやって熱心にお参りしていくら稼いでも「所詮われらは食ひ倒れ」、いずれはまたすっからかんさというわけだ。一見自嘲的にも読めるが、そうではあるまい。江戸っ子が「宵越しの銭は持たねえ」と言うのといっしょで、大いに浪速っ子気質を自慢しているのである。一度は行ってみたいお祭りの一つだ。『新歳時記・新年』(1990・河出文庫)所載。(清水哲男)




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