プロ野球オーナー会議、案の定ネズミ一匹も出ず。ファンを意識したのはカープのみか。




2004ソスN9ソスソス9ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

September 0992004

 一足の石の高きに登りけり

                           高浜虚子

暦九月九日(今年の陽暦では10月22日にあたる)は、陽数の「九」が重なるので「重陽」「重九」と呼び、めでたい日とする。その行事の一つが「高きに登る(登高)」ことで、秋の季語。グミを詰めた袋を下げて高いところに登り、菊の酒を飲むと齢が延びるなどとされた。したがって、「菊の節供」「菊の日」とも。元来は中国の古俗であり、今ではすっかり廃れてしまったが、この言い伝えを知っていた人は登山とまではいかずとも、この日には意識してちょっとした丘などの高いところに登っていたようだ。一種のおまじないである。「行く道のままに高きに登りけり」(富安風生)。掲句はその無精版(笑)とでも言おうか。用もないのにわざわざどこかに登りに行くのはおっくうだし、さりとて「登高」の日と知りながら登らないのも気持ちがすっきりしない。だったら、とりあえず一足で登れるこの石にでも登っておこうか。どこにも登らないよりはマシなはずである。というわけで、茶目っ気たっぷり、空とぼけた句になった。ただ、古来の習俗が形骸化していく過程には必ずこうした段階もあるのであって、その意味では虚子ひとりの無精とは言えないかもしれない。それが証拠に、たとえば草間時彦に「砂利山を高きに登るこころかな」の一句もある。『新歳時記・秋』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)


September 0892004

 台風直撃肺活八〇〇で怺えんとす

                           名取 等

年の日本列島は、うんざりするほど台風に見舞われつづけている。直撃を受けた地方の人は「うんざり」どころではないのだが、あまり直撃されない東京などでも、通過中は大気全体が異常な湿り気を帯びていて、体調にも少しく影響してくる。ましてや作者のように「肺活(量)八〇〇」程度で、しかも「直撃」されたとあってはたまるまい。強風に抗してただ呼吸をするだけでも、大変な苦しさなのだ。しかし、仕事には出かけなければならず、激しい雨風のなかに「怺(こら)えんと」出てゆく決意の句だ。自然の猛威にさらされるのは、いわゆる健常者ばかりではない。作者のような人もいるし、他のハンデを背負った人もいる。ニュースで報道される被害者のなかには、そういう人たちも当然含まれているのだろうが、そうした個人的事実は伝えられない。受け取るほうも、つい「ワン・オブ・健常者」と思ってしまい、そこまでは考えが及ばないのである。作者の意図はともかく、掲句はそうしたことを私たちに認識させてくれるという意味でも、貴重な一句ではなかろうか。ちなみに、それこそ健常者(18歳以上の成人)の肺活量の推測正常値は次の通りだ。男性={27.63−(0.112×年齢)}×身長。女性={21.78−(0.101×年齢)}×身長。作者の「八〇〇」は、なんと小さく、か細い数字であることよ。『現代俳句歳時記』(1989・千曲秀版社)所載。(清水哲男)


September 0792004

 何がここにこの孤児を置く秋の風

                           加藤楸邨

浮浪児
のページを八年ほど書いてきて、その折々の選句を振り返ってみると、結局私の関心やこだわりは先の大戦と敗戦以降の数年間に集中していることがわかる。年代でいえば、少年時代だ。たとえ時世に無関係なような花鳥風月句でも、どこかであの時代の何かに関わっている。いつまでも拘泥していてはならじと、時にジャンプしてはみたものの、またあの頃にいつしか回帰してしまっている。偶然に生き残った者のひとりとしての私……。この意識からは、何があってももう抜け出せないだろう。昨日、話題の『華氏911』を見に行ってきたけれど、いまひとつ入りきれなかったのは、マイケル・ムーア監督の位置がブッシュ大統領と同じ超大国の地平上にあったからだ。この映画は超大国の長としてのブッシュを実に痛快に告発しているのだが、弱小国イラク民衆の「何がここに」の呟きのような疑問に応える姿勢はさして無いと言ってよい。いや、理念としてあるのは認められるが、映像的には希薄だったとするほうが正確か。敗戦国の一国民たる私は、その点にいささかの消化不良を起こしたのだった。ま、しかし、これはあくまでも「アメリカ映画」なのである。掲句は、戦後一年目くらいの東京・上野の光景だ。引用した林忠彦の同時期の写真を見れば、戦争を知らない人でもいくばくかは作者の苦しい胸の内がおわかりいただけるだろう。この二人、その後はどうしたのだろうか。いまでも元気でいるだろうか。『野哭』(1948)所収。(清水哲男)




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