「サッサー」開発容疑者の逮捕は懸賞金25万ドル欲しさの密告から。嫌な感じだ。




2004ソスN5ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 1252004

 走り梅雨ホテルの朝餉玉子焼

                           馬渕結子

の週末、久留米(福岡県)に出かける。気になるので週間天気予報を見てみると、明日あたりからずうっと福岡地方には曇りと雨のマークが並んでいる。北九州の梅雨入りは、平年だと来月初旬なので、明日からの天候不良は「走り梅雨」と言ってよいだろう。いまどきから本格的な梅雨入りまでの旅は、これだから困る。日取りが近づかないと、なかなか天気が読めないのだ。五月なので晴天薫風を期待しているだけに、がっかりすることも多い。しかし、旅程は変えられない。ま、雨男だから仕方がないかな……。作者もまた、そんな天候のなかで旅をしている。降っているのか、あるいはいまにも降り出しそうなのか。ホテルで朝食をとりながら、空ばかりを気にしている。雨降りとなると、今日のスケジュールを修正しなければならないのかもしれない。そんなときに、ふっくらと焼き上がった黄金色の「玉子焼」は、なぜか吉兆のように見えるから不思議である。いまにもパアっと日がさしてきそうな、そんな予感を覚えて、作者の気持ちは少しやすらいでいるのだ。むろん気休めにすぎないとはわかっていても、旅の空の下では、普段ならさして気にもとめない玉子焼ひとつにも心を動かされることがある。そして、これも立派な旅情だと言うべきだろう。もしかすると、句の玉子焼は目玉焼なのかもしれないと思った。だとすれば、気休めにはそのほうがより効果的なような気がする。「目玉焼きは太陽である」というタイトルのエッセイが、草森紳一にあったのを思い出した。『勾玉』(2004)所収。(清水哲男)


May 1152004

 無聊の午後のラジオが感じいる軽雷

                           山高圭祐

語は「軽雷(けいらい)」で夏。あまり聞かない言葉だが、各種歳時記の「雷」の項には載っている。さして雷鳴の強くない雷のことだろう。無聊(ぶりょう)をかこつ作者は、何もすることがないのでラジオをつけっぱなしにしている。聞きたいからではなく、ただなんとなくスイッチを入れたのだ。聞くともなく聞いていると、そのラジオがときどきジジッザザッと雑音を発する。そのたびに作者は「はてな」とばかりにラジオに目をやっていたが、そのうちに気がついた。きっとどこかで微弱な雷が発生しているに違いないと。それがどうしたというわけでもないが、けだるい夏の午後、ラジオだけが律儀に外界に反応している図は、なおさらに作者の倦怠感を増幅させたことだろう。1959年(昭和三十四年)の作だから、このラジオは真空管方式のものだと思われる。トランジスタ方式の小型ラジオも普及しつつはあったけれど、まだ高価だった。一万円近くしていたのではなかろうか。学生などの若者にはもとより、一般サラリーマンにも高嶺の花であった。当時私は学生だったが、周辺に持っている奴は一人もいなかった。したがって、当時の文芸などでラジオとあれば、まず真空管方式のものと思って間違いはない。真空管についてはよく知らないが、感度が敏感というよりも、受信がアバウトで、しかも音の波形が崩れやすかったのではあるまいか。だから、ちょっとした環境の変動で、すぐに雑音を発したのだろうと思う。そこへいくとトランジスタは緻密に受信し、増幅しても波形は崩さない。まさに革命的な発明であり、発明者がノーベル賞を受けたのも当然だ。こうしたことを考え合わせると、掲句は真空管ラジオを知らない世代には、厳密な意味では解釈不能な作品と言ってもよさそうである。『昭和俳句選集』(1977)所載。(清水哲男)


May 1052004

 ビール麦と聞けば一入麦の秋

                           酒井康正

ちめん、黄金色に染まった麦畑。作者はビール好きなのだろう。実っているのが「ビール麦」だと聞き知って、なおさらにその美しさが「一入(ひとしお)」目に沁みている。いや、既に喉元あたりに沁みているのかもしれない。と、これは冗談だが、私のようなビール党にはよくわかるし、嬉しい句だ。俗に言うビール麦は大麦の種類の一つで、通常は「二条大麦」という品種を指す。麦飯などに使う「六条大麦」よりも粒が大きく揃っていて発芽力も強いので、ビールの原料には適しているそうだ。これをモルツにしてからホップを加えて醸造するわけだ。ただ残念なことに、私はビール麦の畑を見たことがない。見ただけで小麦と大麦との識別がつくように、ビール麦かどうかはすぐにわかるものなのだろうか。調べてみると、二条大麦の大産地は北九州地方だという。ちょうどこの週末に久留米市に出かける用事があるので見てきたいが、この地方の二条大麦は醸造用ではない(家畜飼料用など)という資料もあって、このあたりは地元の人に聞いてみなければと思う。相棒のホップについては数年前に遠野市(岩手県)で見ることができ、それこそ「一入」目に沁みたのだった。ビールの本場ドイツのホップ畑の広大さは聞いているが、ビール麦畑もさぞや壮観だろうな。書いているうちに、ミュンヘンあたりの古い天井の高いビャホールで、楽士たちに「リリー・マルレーン」でもリクエストして一杯やりたくなってきた。「ゲルマン攻めるにゃ刃物はいらぬ、ビールがたっぷりあればいい」。イカン、イカン。『百鳥俳句選集・第1集』(2004)所載。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます