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March 1232003

 春蒔きの種ひと揃ひ地べたに置く

                           本宮哲郎

語は「物種蒔く」で春。野菜や花の種を蒔くこと。単に「種蒔(たねまき)」というと、苗代に籾種を蒔くことだから、掲句には当てはまらない。この句は、最近の「俳句研究」(2003年3月号)で見つけた。作者の他に何人かで「春の種蒔く」を共通のテーマとして競詠したなかの一句だ。数人の句を読みすすむうちに、かつての農家の子としての意地悪い目で読んでいる自分に気がついた。これらの人々のなかで、本格的に種を蒔いたことのある人は、どの人だろうか……。むろん、ぴしゃりと言い当てられっこはないのだけれど、掲句の作者だけは本物だと思った。「地べたに置く」とあったからだ。空想だけでは、絶対に書けない言葉である。そうなのだ。種でも何でも、すべてを「地べたに置く」ことから、野の仕事ははじまっていく。公園じゃないんだから、ちょっとしたベンチなんてあるはずもない。鋤鍬などはもちろん、着るものや弁当だって、あるいは赤ん坊までをも、みんな地べたに直に置くのである。当たり前のことだけれど、その当たり前を、私は久しく忘れていた。久しぶりに、春の地べたの感触と匂いを思い出し、嬉しくなった句だ。「地べたに置く」の措辞を、しかし圧倒的なリアリティをもって受け止める読者は、もはや少ないのかもしれないが。(清水哲男)




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