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September 2092002

 わが葉月世を疎めども故はなし

                           日野草城

語は「葉月」で秋、陰暦八月の異称。「朝ぼらけ鳴く音寒けけき初雁の葉月の空に秋風ぞ吹く」(眞昭法師)。この歌を読んで、わっ、めちゃめちゃな季重なりと、瞬間感じたのは私だけでしょうか。完璧な俳句病です(笑)。歌のように、朝夕はもう寒いくらいだけれど、日中はまだ暑い日が多いのが、いまごろの「葉月」という月だ。春先と同じで、なんとなく情緒不安定になりやすい。まさに「故はなし」であるのだが、草城は病気がちだったので、やはり身体的不調も加わっていたのではなかろうか。暑いなら暑い、寒いなら寒いのがよい。原稿をもらいに行ったときに、いかにもだるそうに呟いた黒田喜夫の顔を思い出した。筆の遅い詩人だったが、暑からず寒からずの季節には、一日に一行も書けない日があった。電話がない家だったので、とにかく神田から清瀬まで、連日通い詰めたものだ。句に従えば「世を疎(うと)」んじていたはずだから、「世」を代表しているような顔つきの編集者なんぞには、会いたくもなかっただろう。と、今にして思う。もう、三十数年も昔の話だ。ただし、この句からそんなに暗い印象は受けない。無理やりにも「故はなし」と、自分で自分に言い聞かせているところが、どことなくユーモラスで、読者の気持ちをやわらげるからだろう。『日野草城句集』(2001)所収。(清水哲男)




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