暑中お見舞い申し上げます。「泳いでつくるナツのカラダ」というPR団扇でパタパタ。




2002ソスN7ソスソス22ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

July 2272002

 アメリカへ行くお別れの水遊び

                           塩見道子

語は「水遊び」で夏。子供の水を使う遊び全般を指す。公園の噴水池でじゃぶじゃぶやったり、水のかけっこや水鉄砲など、子供たちは水が好きだ。この場合は、ふくらませて庭に置くビニール製のプールでの遊びのような感じがする。「アメリカへ行く」といっても観光旅行ではなく、夫の仕事上での転勤で、一家をあげて渡米するのだ。当分の間は、日本に戻ってこられない。そこで、まだ幼い子の近所の仲良し二、三人に来てもらって、しばし「お別れの水遊び」というわけである。むろん、子供らにはこれでもういっしよには遊べなくなることなどわからないから、いつものようにいつもの調子で、無心にはしゃいでいる。その屈託のない無邪気さが、作者を余計に切なくさせている。行きたくない、このままの平凡な生活がいいな。ちらりと、そんな思いも心をかすめたことだろう。こうした別れの場面が珍しくなくなってから、もう四半世紀ほどになる。私の娘もドイツ暮らしが長いし、つい最近では甥っ子がカナダに転勤となった。友人知己の身内にも、外国暮らしは何人もいる。現に当ページを、海外で読んでおられる日本人の読者も少なくない。まことに時代の激変を感じるが、私にとってはいかに飛行機が速く飛ぶようになっても、アメリカもドイツもカナダも、やはりはるかに遠い国のままである。掲句に目が止まった所以だ。『新日本大歳時記・夏』(2000)所載。(清水哲男)


July 2172002

 草ぐきに鰓さしきたる涼しさよ

                           斎藤梅子

くちぼそ
の夕景。釣った魚を「草ぐき」に吊るした人が戻ってきた。まだ、水がぽとぽとと滴っている。いかにも「涼し」げだ。一読、忘れていた少年時代の一コマを思い出した。退屈だった夏休み。魚釣りにでも行くかと、麦藁帽子(大人用、農民の必需品、かぶると重かった)をかぶって、ひとりでよく近くの川へ出かけたっけ。餌はミミズ。そのへんの土をほじくり返し、シマミミズをゲットして空缶に入れていく。暑さも暑し。炎天下で釣りざお(といっても、それこそそのへんの竹を適当な長さに切り取ったものだった)を垂れていると、ぼおっとしてきて意識が遠くなりそう……。釣れてもよし、釣れなくてもよし。どうでもよし。洒落た魚篭はおろかバケツなんてものもないので、釣れたら掲句の人のように、茎の細くて丈夫そうな草を引きちぎって、鰓(えら)から口に刺し貫いて川水に漬けておく。いちばん釣れたのは「くちぼそ」(写真・平安神宮HPより)だった。「コイ科の淡水産の硬骨魚。体は細長く、全長約8センチ。モロコに似ているが、口ひげがない。各鱗の後縁が黒く、暗色の帯や斑紋があることが多い。日本各地に広く分布。焼いて鳥の餌とする」[広辞苑第五版]。いくら釣れても食べた記憶はないので、いま調べてみたら鳥(たぶん鶏)の餌だったのか。でも、もう少し体長はあったと思うけど。そうこうしているうちに日が西に傾きかけ、晩のご飯を炊くために、獲物をそのへんにぶん投げて走って家に戻るのだった。たぶん、明日も同じことを繰り返すのだろう。『八葉』(2002)所収。(清水哲男)


July 2072002

 うなぎの日うなぎの文字が町泳ぐ

                           斉藤すず子

語は「うなぎの日(土用丑の日)」で夏。ただし、当歳時記では「土用鰻」に分類。この日に鰻(うなぎ)を食べると、夏負けしないと言い伝えられる。今年は今日が土用の入りで、いきなり丑の日と重なった。したがって、この夏の土用の丑の日はもう一度ある。鰻にとっては大迷惑な暦だ。句のように、十日ほど前から、我が町にも鰻専門店はもちろんスーパーなどでも「うなぎの文字」が泳いでいる。漢字で書くと読めない人もいると思うのか、たいていの店が「うなぎ」と平仮名で宣伝している。面白いのは「うなぎ」の文字の形だ。いかにも「うなぎ」らしく見せるために、にょろにょろとした形に書かれている。なかには、実際の姿を組合わせて文字に仕立てた貼紙もあって、句の「うなぎ」表記はなるほどと思わせる。作者は、夏が好きなのだ。もうこんな季節になったのかと、町中を泳ぐ「うなぎ」に上機嫌な作者の姿がほほ笑ましい。今宵の献立は、もちろんこれで決まりである。私は丑の日だからといって鰻を食べようとは思わない性質(たち)だけれど、世の中には、こういうことに律義な人はたくさんいる。名のある店では、今日はさしずめ「鰻食ふための行列ひん曲がる」(尾関乱舌)ってなことになりそう……。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)




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