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February 1922002

 苗札のたてこんでゐる幼稚園

                           高野ゆり子

語は「苗札(なえふだ)」で春。草花や野菜の種を蒔き、その品種や蒔いた月日などを書いて立てておく木札のこと。花の絵などが印刷された種袋を、そのまま苗札にしているのもよく見かける。掲句では場所が「幼稚園」だから、年長組の子供たちが読めるように「ぱんじい」だとか「さくらそう」だとかと、大きな平仮名で書いてあるのだろう。それらが、ごちゃごちゃと「たてこんでゐる」。この「たてこんでゐる」という表現が、実によく効いているなと思った。見たまま、そのままには違いない。けれど、苗札のたてこみようが、元気な園児たちの無秩序な動きにも照応しているようでほほ笑ましい。これがたとえば小学校だったりすると、見たままではあるとしても、句の魅力はがたっと落ちてしまうだろう。とかく自分勝手な動きをする幼児たちもまた、幼稚園に「たてこんでゐる」感じがするというわけだ。少子化のあおりをまともにくって、最近の幼稚園経営は非常に苦しいと聞く。そのうちにだんだんたてこまなくなってきて、この句などは、幼稚園の良き時代を振り返る際のよすがになってしまうのかもしれない。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)




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