切れ味の悪い台風だったが、とりあえず首都圏の水甕はうるおった。台風一過の快晴となるか。




2001ソスN8ソスソス23ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

August 2382001

 サーバーはきっと野茨風が立つ

                           坪内稔典

ソコンを扱う当サイトの読者ならば、おそらくは全員が「きっと」ではなく「キッ」となる句だろう。私も思わず「キッ」となった。最近ではワープロを詠んだ句こそ散見するが、国際的なHAIKUの世界はいざ知らず、俳句で「サーバー(server)」が詠まれたのは初めてではあるまいか。だから「キッ」なのである。で、「なになに、サーバーがどうしたって」と辿ってみると、「きっと野茨(のいばら)」なんだと書いてある。そこで自然の成り行きとして、両者がどのあたりで似ているのかを考えることになる。野茨は初夏に白い花を咲かせ、秋には赤い実をつける。いずれも可憐な印象だ。だが、蔓状の枝には鋭い無数の棘(とげ)が……。つまり、花や実のサービスを受けるためには、この入り組んだ棘を素早く辿り、しかも刺されないように用心して通らなければならない。「きっと」そういうイメージなんだろうなと、私は読んだ。パソコンを操るとは、日々この作業の連続とも言える。のほほんと構えていると、思わぬところで棘にやられてしまう。で、そんなサーバーとのやりとりに熱中し、ふと我に返ると表には「風が立」ち、季節は確実に一つ過ぎているのだった。厳密に言えば無季句だけれど、立つ「風」の気配は秋だろう。「秋風」の項に登録しておく。「俳句四季」(2001年7月号)所載。(清水哲男)

[うへえっ]この「サーバー」は、テニスなどのそれではないかとの反響多し。むろん考えました。だとすれば、可愛い顔して棘のあるサーブを打ってくる少女のイメージか。でも「風が立つ」がつき過ぎだと思い、以上に落ち着いた次第です。パソコン狂の妄想かもしれませんが、ま、いいや。この線で突っ張っておきます。MacOs9.2.1へのアップデータが登場しましたね。


August 2282001

 台風や四肢いきいきと雨合羽

                           草間時彦

風圏にある人たちは、たいていが身を寄せ合うようにして家の内に籠もる。が、防災のために完全武装の「雨合羽(あまがっぱ)」姿で川や崖を見回る男たちだけは別だ。むしろ、日頃よりも敏捷で活気があり「いきいき」として見える。火事場に向かう消防団の男らも同様で、それは災厄に立ち向かい、大切な人命を守るべしという使命感とプライドから来るものだろう。そして私などは、子供の頃に台風が来るたびに自然に血が騒いだ覚えがあるが、そういうことも彼らの身のうちでは起きていて、一種の無邪気な興奮状態がますます「四肢いきいき」とさせているのだと思う。皮肉というほどではないけれど、そんな人間の本性がちらりと介間見えるような句だ。また一方では磯貝碧蹄館に、こんな句もある。「台風圏飛ばさぬ葉書飛ばさぬ帽」。郵便配達だ。こちらもむろん「雨合羽」姿だろうが、少なくとも「いきいき」と、と詠める状態ではない。むしろ、配達夫の「四肢」は縮こまっているのだ。前者が猛威に立ち向かう攻めの姿勢なのに対して、後者は徹底した守りのそれだからだろう。別の言い方をすれば、雨合羽がいわば「衣装」である者と「普段着」である者との違いである。郵便配達のみなさま、そして防災に尽力されるみなさま、ご苦労様です。くれぐれも、お気をつけて。『中年』(1965)所収。(清水哲男)


August 2182001

 野分きし翳をうしろに夜の客

                           大野林火

の草を吹き分ける風だから「野分(のわき)」。古くは台風とは違って荒い風が主体とされたけれど、現代では秋台風のことも含めて詠まれているようだ。この句も、そうだと思う。台風が接近中にもかかわらず、律儀にも約束通りに訪ねてきてくれた「夜の客」。招き入れるために玄関を開けると、客の「うしろ」には、すでに台風の近づいてきた「翳(かげ)」がはっきりと感じ取れる。風も雨も、だんだん激しくなってきた。よくぞ、こんな夜に訪ねてくださった。こういうときには、普段の訪問客よりもよほど親密度が増すのが人情で、作者は気象の変化を気にしながらも、大いに歓待したにちがいない。句とは何の関係もないが、昔の編集者の暗黙のハウツーの一つに、なかなか書いてくれない執筆者宅は、荒天を選んで訪ねよというのがあった。手の込んだ泣き落とし戦術であるが、先輩編集者は実にこまめに嵐だとか大雪の中を歩き回っていたことを思い出す。私にはそんな根性はさらさらないので、オール・パス。ついでに、出勤すらパスすることも再三だった。さて、閑話休題。大型で強い台風11号が近寄ってきた。東京も変な空模様。気象情報で出る「警報」は、生命に関わる可能性が高いという警告を含んでいる。通過地域にお住まいの諸兄姉には、今日だけはできるかぎりオール・パスで過ごしていただきたい。どんな被害も、これっぽっちも出ませんように……。『大歳時記・第二巻』(集英社・1989)所載。(清水哲男)




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