東京でも高校野球の予選がはじまった。話題は西東京に早実が移ってきたこと、ノーシードである。




2001ソスN7ソスソス13ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

July 1372001

 ナイターの点灯しなほ薄暮なる

                           岩崎健一

しい歳時記が出ると、必ず引いて見る項目に「ナイター」がある。野球狂の習い性だ。病膏肓だ。だが、なかなかこれだという句にはお目にかかれない。掲句も、残念ながら句としては面白みに欠ける。現場の魅力に寄り掛かりすぎているからだ。と言いつつも引く気になったのは、句の出来はともかくとして、作者が「ナイター」の劇場的な醍醐味をよく知っているなと思ったからだ。夕方の6時くらいから試合がはじまるわけだが、日没が7時に近いという今ごろの試合だと、まだ明るくて点灯されていない。薄暮ゲームが、しばらくつづく。と、そのうちに、まだかなり明るいのに、照明灯に火が入る。このあたりのタイミングで、句は詠まれた。そして、この後の十五分くらいの間の球場の美しい変化については、申し訳ないが実際に見ていただくしかない。十五分ほどの時の流れのなかで、徐々に変わっていく自然と人工の光線の織りなす微妙な移り変わりの様子は、晴れていればいるほどに素晴らしい。これだけでも、出かけて金を払う値打ちがある。したがって、逆に「ナイターの雨を見てをり夫の背」(丹間美智子)にはひどく辛いものがある。せっかく、楽しみにして二人で遠出してきたのに……ね。いい奥さんだ、なんて野暮な雨なんだ。句としては、断然こちらの勝ちである。『新日本大歳時記・夏』(2000・講談社)所載。(清水哲男)


July 1272001

 木に登る少年は老い夏木立

                           三宅やよい

い木陰をつくり、群れ立っている夏の木々。葉が茂っているので下からは姿がよく見えないのだが、その一本に少年が登っている。なんだか、このまま彼が下りてこないような感じを受けたのだろう。木の上では猛烈なはやさで時間が過ぎていて、登った少年もあっという間に年をとってしまう……。という、夏の真昼時の幻想だ。この句に出会って、もうずいぶんと木に登ってないなと思った。少年時代には、退屈すると登った。適当な枝に腰掛けて脚をぶらぶらさせ、青葉のかげから遠くを見ていた。たまに下を通る人がいると、何故だか知らないが、気がつかれないように身を小さくしたものだった。柿の木は折れやすいので登ってはいけないと知りながらも、おっかなびっくり登るスリルも楽しんだ。本当に、枝といっしょに落っこっちゃった不運な友もいたけれど……。木の上に暮らしていたハックルベリー・フィンじゃないが、あそこには地上とは別の魅力的な世界がある。地面からほんのわずか浮き上がっただけなのに、子供でも(子供だからか)人生観が変わったような気にすらなる。私などもはや木に登ることもあるまいが、いま登ったとしたならば、たまさか通りかかった誰かは、どんな句に仕立ててくれるだろうか。ま、その前に、おせっかいな誰かが飛んでくるのだろう。そういえば、どなたか俳句の「モデル」になったことはありますか。『玩具帳』(2000)所収。(清水哲男)


July 1172001

 父ひとりゆく日盛りの商店街

                           廣瀬直人

独の肖像。偶然に、後ろ姿を見かけたのだろう。アーケードがなかった頃の「日盛りの商店街」は、さすがに人通りも少ない。そんなカンカン照りのなかを、老いた父親がひとりで歩いている。それでなくとも男に昼間の商店街は似合わないのに、何か緊急の買い物でもあるのだろうか。それとも、この通りを抜けて行かざるを得ない急ぎの用事でもできたのか。呼び止めるのもためらわれて、作者はそこで目を伏せたにちがいない。それこそ用事もないのに、次の角を曲がったか。えてして、男同士の親子とはそんなものである。だから、この「父」の姿は多くの男性読者の父親像とも合致するだろう。その意味で、作者の単なる個人的なとまどいを越えて、掲句は説得力を持ちえている。この父親像は、今日も確実に各地の「商店街」に存在している。ただし、句集を読めばわかることだから書いておくが、作者がなぜこの句を詠んだのかには抜き差しならぬ事情があったのだ。作者の妹である「父」の娘が、少し前に産児とともに急逝したという事情である。「青嵐葬場に満ち母と子焼く」など作者痛恨の十句あり。そうした事情があってのこの句なのだが、しかし、作者が目撃した「父」の事情は、あるいはこの事態とはかけはなれていたかもしれない。が、妙な忖度などせずに、すっと「父」の後ろ姿に目を伏せるのが、私の愛する表現を使えば「人情」というものである。『帰路』(1972)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます