Mac OSX本日登場(β版)。この世界の変化には理詰めの魅力がある。人智は果て無しとも思えぬが。




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September 1392000

 木瓜の實をはなさぬ枝のか細さよ

                           後藤夜半

目は「はなさぬ」にあるのだろう。「はなさぬ」だから、木瓜(ぼけ)の枝は我とわが身の一部を「にぎっている」のである。木瓜の木を、擬人化しているわけだ。数日前にこの句を読んで、つくづくと「木瓜の實」がなっている姿をみつめることになった。近所にあるので、何度か見に行った。たしかに「か細い」枝である。直径三センチくらいの球形の実が、さながらサクランボのように、あちこちにかたまってなっている。物理的な必然から、当然に「か細い」枝はしなっている。夜半の書いたとおりだ。私は一度も、木瓜の枝など注視したことはなかったので、さすがに俳句の人は凄いもんだと感心した。でも、いくら熱心に見ても「はなさぬ」という見立てには通じなかった。この擬人化は何のためなのだろうかと、逆に疑念がわいてきてしまった。よく、わからない。悩んだあげくの(いまのところの)結論として、「か細さよ」を強調するためのテクニックだろうと決めてみた。しなった枝に、人間並みの「健気さ」を見ているのだと……。好意的にこれをとって、作者の身近に「擬木瓜化」したいような健気な「人」が存在していたのだろうと……。「木瓜」を詠んで「人」を詠んだのだと。実は私は、たいした理由根拠もないけれど、どうも動植物の擬人化が好きになれない。チャーリー・ブラウンは好きですが、スヌーピーはそんなに好きじゃないのです。『底紅』(1978)所収。(清水哲男)


September 1292000

 月に行く漱石妻を忘れたり

                           夏目漱石

まりの月の見事さに、傍らの妻の存在も忘れてしまった。と、ちょっと滑稽な味付けで月を愛でた句。句意はこの通りでもよいのだが、前書に「妻を遺して独り肥後に下る」とある。漱石が1897年(明治三十年)に、熊本は五高の教授として単身赴任するときの句だ。このときの漱石には、妻を忘れようにも忘れられない事情があった。妻の鏡が流産して静養中の身だったからだ。一緒に行こうにも、行けなかった。止むを得ぬ単身赴任。そこで『吾輩は猫である』の作者は、境遇を逆手にとった。わざと事実を詠み違えた。肥後の月の美しさに魅かれて、俺はお前のこともすっかり忘れて出かけるんだよ。俺のことなど案じるなかれと、病む妻に反語的ながら、慈愛の心で挨拶を送っているのだ。当時の単身赴任は、相当に心細かったろう。胃弱の漱石のことだから、ちくりちくりとと胃の痛む思いだったろう。だから掲句は、同時に心細い我とわが身を励ますためのものだったとも読める。そうに違いない。月を詠んだ句はヤマほどあれど、この一見あっけらかんとした句には、異色の味わいがある。噛めば噛むほど、味が出る。『漱石俳句集』(1990)所収。(清水哲男)


September 1192000

 十五から酒をのみ出てけふの月

                           宝井其角

秋の名月には「十五夜」「望月」「明月」などいろいろな言い方があって、「けふの月(今日の月)」もその一つ。なかには「三五の月」という判じ物みたいな季語(3×5=15)もある。それぞれに微妙なニュアンスの差があり、「けふの月」には「今年今月今夜のこの月」をこそ愛でるのだという気合いがこもっている。「月今宵」とほぼ同じ感覚だ。さて、数え年で十五といえば、まだ中学二年生。「のみ出て」は「常飲しはじめて」の意味で、好奇心からちょっと飲んでみたのではない。其角がその一年前に蕉門に入っていることを考え合わせれば、現代の目からすると、よく言えば早熟、悪く言えばずいぶんとひねこびた子供だった。しかし、元服(成人式)が最若十一歳くらいから行われていた時代なので、現代とはかなり事情が違う。が、こうして其角があらためて「十五から」と回想しているくらいだから、子供の酒飲みはそんなにいなかったのだろう。陰暦では月の満ち欠けが時間の指標だったわけで、これまた現代人とは大いに月の見方は異なっている。すなわち「けふの月」に来し方を回想するのは、当時の人々にとってはごく自然な心の働きだったはずだ。その回想の基点を「十五夜」にかけて「十五」という年齢に定め、しかも月見の宴にかけて「飲酒」に焦点を絞ったところは、やはり非凡な才能と言うべきか。とにかく、カッコいい句だ。思い返せば、私が「のみ出」したのは二十歳を過ぎてから。かたくなに法律を守ったかのようで、カッコわるい。なお、今年の名月は明日12日です。(清水哲男)




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