今夜はドームで巨人広島戦。今季最後の球場観戦になるだろう。徹夜で並ぶシリーズは、もう無理だ。




2000ソスソスソス9ソスソスソス5ソスソスソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

September 0592000

 んの字に膝抱く秋の女かな

                           小沢信男

立ての妙。「余白句会」で、満座の票をかっさらった句だ。たしかに「んの字」の形をしている。「女」は、少女に近い年齢だろう。まだあどけなさを残した「女」が物思いにふけっている様子だから、その姿に「秋」を感じるのだ。「んの字」そのものが、相対的に見ると、独立した(成熟した)言語としての働きを持たないので、なおさらである。爽やかさと寂しさが同居しているような、秋にぴったりの風情。からっとして、ちょっぴり切ない風が、読者に吹いてくる。佐藤春夫の詩の一節に「泣きぬれた秋の女を/時雨だとわたしは思ふ」(表記不正確)があり、同じ「秋の女」でも、こちらには成人した女性を感じさせられる。時雨のように、この「女」はしめっぽい。そして、色っぽい。ついでに、私がそらんじている「女」の句に、島将五の「晩涼やチャックで開く女の背」がある。「晩涼」は、夏の夕暮れの涼しさ。小沢信男は「女」を横から見ているが、島は背後から見ている。すっとチャックを降ろしたとすると、真っ白い背中が現われる。……という幻想。これだけで涼味を感じさせる俳句も凄いが、考えてみたらそうした感覚を喚起する「女」のほうが、もっと凄い。ねえ、ご同役(??)。「男」だって、簡単に「んの字」くらいにはなれる。いまどきの「地べたリアン」なんて、みんなそうじゃないか。などと、冗談にもこんなことを言うヤツを、常識では野暮天と言う。小沢や島、そして佐藤の「粋」が泣く。『んの字』(2000)所収。(清水哲男)


September 0492000

 切るだけで貼らぬ切抜き秋暑し

                           後藤雅夫

聞や雑誌の記事の「切抜き」。仕事にせよ趣味にせよ、あれはなかなか面倒なものだ。切り抜くだけは切り抜いても、きちんとスクラップ・ブックに貼っておかないと、用をなさない。つい、切り抜いたままにしてしまう。それが、どんどん溜まってくる。作者の机上にあるのは、おそらく今日の「切抜き」だけではないのだろう。涼しくなったらちゃんと整理しようと思っていたのが、いっこうに涼しくなってくれない。残暑が厳しい。だから、今日も面倒になって、切り抜いたままで放置してしまった。もちろん、大いに気にはなっている。その気持ちが「秋暑し」に、ぴたりと結びついている。私にも「切抜き」の覚えがあるので、よくわかる。何度もチャレンジして、一度も成功しなかった。本棚にはスクラップ・ブックが数冊あるが、引っ張り出すと、ばらばらっと貼ってない「切抜き」が抜け落ちてくる。おのれの怠惰を見せつけられたようで、愉快な気分じゃない。ならば貼らないで整理しようかと、山根一眞流に、項目分けした袋に放り込む方針に転換した。「俳句」の記事は「俳句」と書いた袋に、「野球」関係は「野球」の袋にと。この方法はけっこう長続きしたが、そのうちに切り抜くこと自体が面倒になり、あえなく頓挫。こういうことは、性に合わないらしい。『冒険』(2000)所収。(清水哲男)


September 0392000

 赤とんぼまだ日の残る左中間

                           上谷昌憲

の季節の野球場。ナイト・ゲームは、午後六時開始。カクテル光線と沈みゆく夕日の光りとが入り交じったグラウンドの場景は、夢のように美しい。作者は、まだ残る「左中間」の自然光の明るさのなかに「赤とんぼ」を認めて、和田誠流に言えば「お楽しみはこれからだ」と、もう一度座り直したところだろうか。野球を素材にした俳句は数あれど、球場の心地よい雰囲気を詠んだ句には、はじめて出会った。神宮だろうか、横浜だろうか。いいなあ、行きたいなあと思ってしまう。エポック社の野球ゲーム盤みたいなドーム球場では、絶対に味わえない雰囲気だ。「赤とんぼ」も含めての野球なのである。その昔、ある雑誌の企画で川本三郎さんと「全国球場めぐり」をしたことがある。もったいなくもゲームはそっちのけで、あくまでも「球場」が取材対象だった。なかで印象深かったのは、広島球場と名古屋球場、それに西宮球場だ。広島では応援団の絶妙なユーモアに舌を巻き、名古屋では売られている食べ物の種類の豊富さに驚いた。西宮では、まさに掲句の感じ。思えば「阪急ブレーブス」(現在の「オリックス」)に、落日の兆しがほの見えていた頃である。あのころの球場には「赤とんぼ」も飛んでいたし、蝶も舞っていた。日本シリーズで、巨人・牧野三塁コーチャーに戯れるように舞っていた秋の蝶よ、後楽園球場よ。懐しい日々。「俳句界」(2000年9月号)所載。(清水哲男)




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