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July 1172000

 針葉のひかり鋭くソーダ水

                           藤木清子

葉とは、この場合は松葉だろうか。たとえば、台風一過の昼さがり。澄んだ大気のなかに日が射してきて、庭の松葉の一本一本がくっきりと見えるほどに鮮やかだ。そして、テーブルの上には清涼感に満ちたソーダ水。その発泡も鮮やかである。すべてのものの輪郭がくっきりとしている情景に、作者の心も澄み切っている。生きる活力が湧いてくるようだ。作者には同じような心情の「蒼穹に心触れつつすだれ吊る」などがあるが、他方では「麻雀に過去も未来もなきおのれ」などの鬱屈した句も多い。1935年(昭和十年)に創刊された日野草城の「旗艦」に出句。新興俳句の最初の女性として将来を嘱望されたが、わずか四年にも満たない活動の後に、「ひとすじに生きて目標うしなへり」を残し、忽然として姿を消してしまった。現在に至るも生年も出身地も不明、生死も不明のままだ。最後の句から掲句を透視してみると、人生にきっちり折り目をつけないと気のすまぬ性格だったのかもしれない。なお藤木清子については、中村苑子がもう一人の幻の女流俳人・鈴木しづ子(当歳時記既出)と並べて、発売中の「俳句研究」(2000年7月号)に愛惜の思いを込めて書いている。『女流俳句集成』(1999・立風書房)所載。(清水哲男)


May 2552002

 簾巻きて柱細りて立ちにけり

                           星野立子

語は「簾(すだれ)」で夏。夕刻になって、涼しい風を入れるために簾を巻き上げた。と、普段は気にも止めていなかったのだが、意外なほどに我が家の柱の細いことに気づかされたのである。簾の平面と柱の直線の切り替わりによって、以前より細くなったように見えた。もっと言えば、まるで「柱」みずからが、昼の間に我と我が身を細らせたかのようにすら見えてくる。こんなに細かったのか。あらためて、つくづくと柱を見つめてしまう……。「柱の細く」ではなく「柱細りて」の動的な表現が、作者の錯覚のありようを見事に捉えており、「巻きて」「細りて」と「て」をたたみかけた手法も効果的だ。日常些事に取材して、これだけのことが書ける作者の才能には、それこそあらためて脱帽させられた。俳句っていいなあと感じるのは、こういう句を読んだときだ。簾といえば、篠原梵に「夕簾捲くはたのしきことの一つ」があるが、私も少年時代には楽しみだった。巻き上げても両端がちゃんと揃わないと気がすまず、ていねいに慎重にきっちりと巻いていく。少しでも不揃いだと、もう一度やり直す。格別に整理整頓が好きだったわけではなく、単なる凝り性がたまたま簾巻きにあらわれたのだろう。いまでも乱暴に巻き上げられた簾を見かけると、直したくなる。『笹目』(1950)所収。(清水哲男)


June 0862011

 ほつれ毛に遊ぶ風あり青すだれ

                           竹久夢二

多き画家、独特の美人画で誰もが知っている夢二ならではの写生句。青すだれ越しの涼風が美人さんのほつれ毛にたわむれ、ひたいやうなじにもまとわりついている。いや、それは風のみならず、じつは美人さんを見つめる夢二の視線が、ほつれ毛にたわむれ遊んでいるとも言えよう。「ほつれ毛」「風」「青すだれ」――それらのデリケートな重なり具合が計算されている。「青すだれ」の語感が涼しさをたっぷりと放っている。葭やビニールなどさまざまな材料で編んだすだれがあるけれど、青竹で編んだ青すだれこそ、暑い夏なおいちばん涼しそうに感じられる。すだれはクーラーなどなかった時代の夏の風情を、日本的に演出した視覚的な家具でもあった。夢二は若い頃には社会主義青年として、平民社の荒畑寒村らと共同自炊生活を送ったこともあり、絵のほかに無季俳句の連作を発表したこともあった。いかにも夢二らしい「襟足の黒子(ほくろ)あやふし朧月」という句や、「味噌をする音に秋立つ宇治の寺」という本格的な句もある。『夢二句集』(1994)所収。(八木忠栄)


October 17102014

 時々は小鳥飛び交ひ雨の森

                           長谷川敏子

が色付き始め季節は小鳥来る秋へと移ろってゆく。日本の秋は野分、秋雨前線、秋黴雨と梅雨時以上に降雨量が多い。その分雨の合間の青空は「梅雨晴間」同様「秋晴れ」となって目に沁みる。その空を渡って大陸からツグミ、ヒワ、ヒヨドリなどの小鳥が群れをなしてやって来る。豊穣の森には赤い木の実や草の実などの餌がいっぱいである。活き活きとした鳥たちが森の雨の間合いを計って飛交い、やがて来る冬を前にこれらの餌を求め飽食の時を過ごしてゆく。他に作者が江戸千家の茶人としての句<亭主として袷の無地と決めてをり><きりもなく茶を点ててをり夏衣><末席も水屋も仕切る青簾>などがある。『糸車』(2007)所収。(藤嶋 務)




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