October 26101999

 秋薔薇や彩を尽して艶ならず

                           松根東洋城

は「いろ」、艶は「えん」と読む。毎日、俳句を読むようになってから、自分にいかに動植物に関わる知識が欠けているかを痛感している。特殊な動植物のそれではなく、そこらへんで見かける植物や動物について、知らないことが多すぎるのだ。これではならじと、ここ三年ほど、一つ一つ覚えるようにしてきたものの、まだまだ駄目である。今朝方も庭に薔薇が咲いているのを見て、狂い咲きかなと思っていたら、俳句の季語に「秋薔薇」が存在することを知って愕然としたばかりだ。講談社から新しく出た『新日本大歳時記』をパラパラめくっていたら、目に飛び込んできた(ちなみに、当ページが一応のよりどころにしている角川書店の『俳句歳時記』には、「秋薔薇」の項目はない)。講談社版から、解説を引き写しておく。「薔薇は四月、五月と咲くので夏の季語であるが、一段落して盛夏を休み、秋涼しくなって再び咲くのを秋薔薇という。二度目なので樹勢に左右され、花はやや小ぶりであることが多い。秋気いや増す中で芳香を放って咲く気品が愛される」(伊藤敬子)。で、例句として掲句がプリントされているのだが、解説との微妙なニュアンスのずれが面白い。解説者は秋薔薇の美点を芳香に見ており、作者は色彩に見ている。いずれにしても両者ともが、秋の薔薇のほめ方に少し困っている。「色はいいんだけどなあ」と書いた東洋城のほうが、少し正直である。(清水哲男)




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